真田将太朗が描く絵画の新たな拡張体験をSmart IPイマーシブが実現

「風景は縦に伸びる」という感覚に基づき、新しい風景画を探求する画家・真田将太朗氏。東京藝術大学卒で、現在は東京大学大学院に在籍しながら創作活動を行う新進気鋭のアーティストです。
東京・銀座のGINZA SIXで開催された彼の個展「POINT OF VIEW」の会場では、展示された風景画と共に、立体的な音の響きが来場者を包み込んでいました。視覚と聴覚が同時に刺激される展示によって、従来の絵画鑑賞とは異なる没入体験が生まれていたのです。
この体験を支えていたのが、GenelecのSmart IPシリーズを用いた6.1.6ch立体音響システム。天井に「4410A」が6台、壁側の目線より少し低い位置に「4420A」が6台、そしてサブウーファーの「3440A」が1台配置され、長方形の会場を立体音響で満たしました。
個展の主である真田将太朗氏は、今回の展示に "東京" というテーマを掲げ、「鑑賞者それぞれに、東京の風景との距離感を楽しんでもらいたかった」と語ります。このテーマを実現する手法として、最初から立体音響を使うことにこだわっていました。
いわば"アートと音響の交点" としてSmart IPによる6.1.6chのシステムが選ばれたのです。
真田 「普段、風景画を描く時に特定の地名をタイトルにすることはないんですが、今回は "東京" というテーマで、 "品川" や "渋谷" など具体的な街の姿を描きました。都内の様々な場所が鑑賞者の記憶や体験と結びつき、多様な風景として立ち現れるようにしたかったんです。個展会場を歩きながら、東京の街をぐるりと一望できるような空間を設計したいと。そんな広い空間性を実現するために、立体音響は必ず使おうと思っていました」
会場の音響システム構築を担ったのは、レコーディング・エンジニアの古賀健一氏。真田氏は、以前から親交のあった古賀氏のスタジオで立体音響を体験し、その魅力に圧倒され「次の個展で使いたい」と強く思っていたと言います。
そんな真田氏の希望を実現するため、古賀氏が選んだ機材がGenelecのSmart IPシリーズでした。
音の良さはもちろん、LANケーブル1本で
電源と音声をやりとりできるのが決め手でした。
古賀 「アートの展示会場にたくさんの電源ケーブルを這わせるのはナンセンスですし、パッシブ・スピーカーだとアンプの設置も考慮する必要があります。その点、最小限のシンプルな構成で運用しやすく、高クオリティな音を鳴らせるSmart IPシリーズは理想的です。音の良さはもちろん、LANケーブル1本で電源と音声をやりとりできるのが決め手でした。
古賀「6.1.6ch設置の細かい部分は、サウンド・エンジニアの池田くんが担当してくれました。ファントム定位を活かし、絵の中央に音像が浮かぶように調整していて、絵の向こう側にも世界が広がるような音の奥行き感を出せたのではないかと思います。今回は会場が長方形で低域が回りやすいため、ベース・マネージメントはしなくて大丈夫だったのですが、次回やるならサブウーファーの3440Aに用意されたマウント・アクセサリーを使っての天吊もぜひ試したいですね。実際に運用すると、音響面でやりたいことがどんどん出てきます」
このSmart IPで再生するイマーシブ音源を作曲したのは、桶家武尊氏。真田氏が「以前にもコラボレーションして相性が良かった」と語る、若き作曲家です。桶家氏は「立体音響を念頭に音を組み立てるのは、ステレオ音楽制作とはまったく異なる思考だった」と振り返ります。
桶家 「真田さんから "東京" というテーマで音楽制作の依頼を受けてから、まず会場の空間図が送られてきて、古賀さんがSmart IPシリーズの配置を決定し、それと同時進行で音楽を作っていきました。実際にやってみて、立体音響を手掛けている方々へのリスペクトが爆発しましたね。
作曲で意識したのは、絵画では表現できない "時間の流れ" を音楽で担い、その振動で空間を満たすこと。曲調が少しずつ変化することで、同じ絵の見え方が変わっていくような効果を狙いました。アンビエントな質感にとどまらず、ドラムなども取り入れ、無機的なものと有機的なものが交錯するようなサウンドスケープを構築しました」
この桶家氏の豊富なアイデアとインスピーレーションによって制作された楽曲を、サウンド・エンジニアの池田翔氏がSmart IPで会場に実装。自身もGenelecユーザーである池田氏は、Smart IPのサウンドはもちろん、設置性やデザイン性の高さなど、改めてGenelecならではの魅力を強く感じたと話します。
丸みのあるデザインが
現代アートの空間と調和するのも利点ですね
池田 「私はもともと8320Aを使用しているので、音質は信頼していましたが、Smart IPを使うのは初めての経験でした。LANケーブル1本で電源・音声を制御できる利便性は、本当に素晴らしいですね。今回はあえてスイートスポットを作らず、会場のどこに立っても立体音響に包まれながら絵に集中できるような調整を心がけました。6.1.6chという変則的な構成も、スピーカー配置が長方形の会場にハマり、高い音響効果が実現できたと思います。
あと今回、改めて実感したのは、Genelecスピーカーのデザイン性の高さです。業務用スピーカーって、黒い無骨な機材が多いじゃないですか? でも、美術館やギャラリーでよくあるホワイトキューブ(=シンプルな白い天井と白い壁による立方体の展示空間)で、ただの四角い黒やグレーのスピーカーを入れると、視覚的にノイズになってしまいます。その点、Genelecスピーカーは白のカラーリングが選べるし、丸みのあるデザインが現代アートの空間と調和するのも利点ですね」
4人のアーティストによって作り上げられた「POINT OF VIEW」は、絵画と音響が一体となったインスタレーション事例として、まるで風景画に奥行きを生むような拡張体験を実現しました。今回の主役である真田氏自身も、Smart IPの使用によって実現した立体音響から「新たな表現の価値」を得たようです。
真田 「今回の展示では、"東京" というテーマで私が感じたものを表現する場として、期待を超える空間が作り出せました。複数のスピーカーから出た音が広がることで、会場が実際より広く感じられたというか……壁や天井を拡張することはできないのに、音楽によってそれが実現できること。これは本当に面白いと感じましたね。また、今回は設営のための準備期間がかなり短かったのですが、その限られた中でもSmart IPを使用したことで満足のいく表現が実現できたのだと感じています」
真田将太朗
2000年兵庫県西宮市生まれ。東京藝術大学美術学部美学専攻を卒業後、東京大学大学院学際情報学府修士課程に在学中。クマ財団8・9期奨学生。「新しい風景」をテーマとする大型の抽象絵画を発表の中、人の創造性は拡張された身体とのコミュニケーションにも宿るかを絵画制作と人工知能開発を通して探る、美学・情報工学の領域横断的研究を実践。
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