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AutoCal 2

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そもそもGLMは、モニタリングをさらに理想的な環境にて行うことを可能としたソフトウェアで、下記3つの機能が主な特徴となっております。

 

① Genelecのスピーカーが設置された部屋にて音響上の特性をキャリブレーションし、理想的な音響特性へ補正することができる。

 

 

② GLMに対応するGenelecのSAMシステムのスピーカーの設定を、簡単にかつ確実に行うことができる(例:サブウーファーとのクロスオーバー、位相調整など)

 

 

③ GLMのネットワークに接続された全てのSAMシステムの音量やミュート/ソロ、オン/オフ、または異なるスピーカー配置(ステレオ、2.1ch、イマーシブなど)へのグループ切り替えなどを全て行うことができる。

 

つまりGLMは、GenelecのSAMモニターと組み合わせることで、例え場所が変わったとしても適切なバランスでモニタリングを行うことを可能とし、どこで聴いても意図したとおりのバランスでの再現をする「一貫したミックス」の制作を行うことをサポートします。それに加え、その優れたスピーカー・マネジメント機能によって、モニタリングの作業効率を大きく上げる信頼性の高い環境を提供することを大きな特徴としております。

 

GLMとは? - 「AutoCal 2」を知る
▲GLMのAutoCal 2を使用した場合のキャリブレーション動作イメージ

 

「AutoCal 2」は、以前のバージョンに比べ、特にその"キャリブレーションの精度"、そして使い勝手を大きく左右する"キャリブレーションの速度"が大きく改善されました。


AutoCal 2 - GLM

「AutoCal」とは、GLMによるキャリブレーションの核を担うアルゴリズムのことです。

「AutoCal 2」では、全てのコードが見直され、64ビット・アーキテクチャを新たに採用。また、多チャンネルのモニター/サブウーファーを含むモニター・システムのキャリブレーションに要する演算時間の飛躍的な高速化も実現しています。これは、ステレオでのキャリブレーションはもちろん、Dolby Atmosをはじめとする、イマーシブモニター環境のセットアップ時においても、ごく短時間でキャリブレーションが行えることを意味しています。この高速化は、ルーム・アコースティックが変化した時……例えばスピーカーの位置を動かした際でも、気軽にキャリブレーションをやり直すことができることを意味します。つまり、より正確なモニタリング環境に向けて、常にアップデートし続けられるということになります。

また、使い勝手の面で一番の大きな違いは、キャリブレーションの際の演算をクラウドで実効するようになったという点です。

従来のAutoCal は、ローカル(ホストの内蔵CPU でキャリブレーションの際の演算を行う)とクラウド(サーバー上でキャリブレーション演算を行う)を選択することができましたが、AutoCal 2から完全にクラウドのみで動作する方式を採用しました。これは、常に最新のアルゴリズムを利用することができるという大きなメリットへと繋がっています*。

*註:インターネット接続のない環境にてGLMを使用する際は、「Local AutoCal」をお使いのパソコンにインストールすることでご利用いただけます。ただし、その場合は従来の「AutoCal 1」での動作となります。

 

AutoCal 2では、サウンドに関わる部分でも大きく進化しています。特にEQフィルター・アルゴリズムの進歩は見逃すことのできないポイントです。

従来のGLMのAutoCalは、マイナス方向のみの補正でした。ご承知のようにモニターの設置環境は、音質に大きく影響します。壁や天井、床およびミキシングコンソール、テーブル、機材ラック、家具などは、すべて反響の原因となります。そして、この反射が、スピーカーからの直接音に干渉し、ベースレベルが極端に高くなったりと最終的なミックスの低域に影響を与えてしまうことがあります。こうした悪影響を極力排除するというのが、このマイナス方向のみとしていた理由です。

対してAutoCal 2では、それまでのマイナス方向のみの補正に加えて、低域の100Hz~300Hzの範囲を中心周波数としてプラス方向へと補正する「ポジティブ・ゲイン」を搭載しています。これにより、客観的なフラットネスを向上させながら、主観的な低域の量感を損なうことなく、優れたバランスでより正確なモニタリング環境の構築を可能とします。

GLMとは? - 「AutoCal 2」を知る
▲GLMにて、「AutoCal 1」を使用した場合の補正結果(左)と、GLM 4.1以降の「AutoCal 2」を使用した場合の補正結果(右)。青い線で記される「適用フィルター」のカーブを比べると、AutoCal 2では、100〜300Hzの範囲を中心周波数として「0」を上回るフィルターが適用されるようになったことが確認できる

 

そしてもうひとつ、ポイント・ソース・モニターの「The Ones」シリーズをお使いの皆様にとって重要な機能となるのが、「The Ones における拡張された位相直線性」です。

GLMとは? - 「AutoCal 2」を知る
▲GLM 4.1以降のバージョンでは、システム内にThe Onesのスピーカー(8331A、8341A、8351B、8361A)がある場合、グループ設定の画面に「拡張された位相直線性」というメニューが表示される

 

これは3ウェイ構成となるThe Ones モニター(8331A、8341A、8351B、8361A)をグループで使用している場合、約100Hzまでの帯域で平坦な位相特性を得ることができるというものです。基本的にはオンでご使用いただくことを推奨しており、これにより軸外特性の向上を実現します。また、例えばThe Ones モニターと2ウェイのSAM™モニターを組み合わせたモニタリングシステムの場合においても、音像を安定させることができるなどのメリットをもたらします。詳しくは、ブログ:The Onesで有効になる「拡張された位相直線性」とは? をご覧ください。

 

最後に、左右対称キャリブレーションの改善も見逃せないポイントです。これは、従来は全帯域に対して左右共通で適用していたEQ フィルターを、よりルーム・アコースティックの影響を受けやすい低音域のみに個別EQを適用するというものです。これにより、正確な低音域の補正が得られるようになりました。

GLMとは? - 「AutoCal 2」を知る

“左右同一のEQ”は、中高域に同じEQフィルター設定を適用しますが、低域においては、“左右同一のEQ”を選択しても左右チャンネルそれぞれで個別のEQフィルターを適用するように設計されています。低域は中高域よりも単位周波数ごとの音変化が激しく、また波長が長いため、スピーカーの配置や部屋に置かれているもの(家具や機器など)の影響を受けやすく、同じレスポンスを得ることは難しくなります。そのため、低域に関しては左右チャンネル個別でEQを適応することが有効となります。一方の中高域は、同一のEQを適用することでステレオイメージやファンタムセンターが改善されます。

このように、AutoCal2では、さらなるキャリブレーション性能の改善や利便性が向上しています。

ぜひ皆様も、最新のGLMをインストールして、AutoCal2の精度の向上と、さらに高速となったキャリブレーション時間をご体感ください。