GZ-TOKYO –

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GZ-TOKYO – ミックスに自信を与える再現性とスピード感

株式会社Zaxx代表取締役の舘英広氏

中京圏で他に先駆けてサラウンド対応のMAルームを開設

―― 舘さんは中京テレビ放送でミキサーとしてのキャリアをスタートさせたそうですね。

そうです。私は名古屋出身で、20歳のときにCTV MID ENJIN(注:中京テレビ放送系列の映像制作会社)の前身となる会社に入社し、1年後くらいから音声の仕事を任されるようになりました。僕は昔から音楽が大好きな人間だったので、音楽番組のミキサーを担当するというのが最初の目標でしたね。当時の中京テレビ放送は、中京圏のテレビ局の中では最も勢いがある局だったので、音楽番組もたくさん放送していたんです。でも、そういう花形番組を手がけるのは社内の人で、外部の人間にはなかなか回ってきませんでした(笑)。でも、いずれは自分でも手がけたいと思い、常に鍛錬していたんです。例えば当時、文化放送主催のレコーディング・セミナーが福島や長野であって、そういうのに参加したりとか。東京からスタジオ・ミュージシャンを呼んで、1週間くらい泊まり込みでレコーディングを行うなかなか凄いセミナーだったんですよ。それから徐々に音楽番組も任されるようになって、当時放送していた名古屋ローカルの『5時SATマガジン』という番組は15年近く担当しましたね。ほぼ100%生放送のバラエティ・音楽番組で、今は大物になっているアーティストもたくさん出演していました。

―― 独立されたのは何歳のときですか?

1998年、39歳のときです。テレビ局に限界を感じたというのもありますが、サラウンドをやりたかったというのが一番の理由です。中京テレビ放送時代も、ローランドのRSSやQSoundなんかを使って、2chのバーチャル・サウンドはよくやっていたんですよ。例えば、Jリーグの名古屋グランパスエイトの試合などは、バーチャル・サラウンドでミックスしていました。しかしやっぱり本格的なサラウンドがやりたいと思い、一緒に仕事をしていた3人で独立することにして。名古屋に音楽のプロモートをやっている大きな会社があって、そこが映像・音声のポストプロダクションを一部門として設立してくれたんです。もちろん、独立と同時に5.1chのミックスができるMAルームも造りました。フジテレビでやっていたDolbyのセミナーに行って、サラウンドについて勉強して……。5.1chのミックスができるMAルームは、当時名古屋では私たちのところだけで、東京にもデジタルエッグくらいしか無かったんじゃないかと思います。けっこう大きな部屋だったので、「こんなスタジオ、一体誰が使うんだ」って批判されたりもしましたけど(笑)。

―― そこではどんなコンテンツを手がけられていたのですか?

当時、CBCテレビがサラウンドに力を入れていたので、いろいろやりましたね。あとは番組だけでなく、住宅メーカーや車メーカーの企業VPとか。それと音楽もののDVD。あるアーティストのライブ・ミックスをサラウンドで作ったりとか。でも正直、サラウンド・コンテンツはそれほどたくさんは無かったですね。

―― そして2011年、ご自身の会社であるZaxxを設立され、2013年にはGZ-TOKYOを開設して東京進出を果たします。

前の会社のポストプロダクション部門を事業譲渡という形で譲り受け、設立した会社がZaxxなんです。やはり名古屋だけでやるのには限界を感じ、2013年に青山にGZ-TOKYOをオープンして、2017年六本木にGZ-TOKYO ROPPONGIをオープンしました。ですので現在3箇所拠点があることになります。名古屋は編集室が5部屋とMAルームが2部屋、青山は編集室が3部屋とMAルームが1部屋、六本木は編集室が6部屋とMAルームが2部屋という構成ですね。

GZ-TOKYO – ミックスに自信を与える再現性とスピード感

AS 207(Dolby Atmos)のリア・サラウンド8040Bとリア・ハイト8030B

―― GZ-TOKYO ROPPONGIのMAルーム“AS 207”は、Dolby Atmosに対応しているそうですね。

ゼロから新しいスタジオを造るのだから、Dolby Atmosに対応させない理由は無いだろうと。既存のスタジオを改装して対応させる場合はかなりコストがかかると思うんですけど、今回はゼロから造ったのでコスト的にもそれほど大きな負担ではなかったんです。最初、スピーカーは7.1.4chの予定だったんですが、少し中抜けする感じがしたので最終的に9.1.4chにしました。ただ、レンダラーに関してはRMUは導入しておらず、ローカル・レンダラーで対応しています。Dolby Atmos対応と言っても、メインの仕事は引き続き2chなので、Avid Pro Tools | S6システムを載せてあるデスクを可動式にすることで、2chのミックスとマルチ・チャンネルのミックスの両方でベストなモニタリングができるように工夫しました。2chのミックスのときはデスクを前方に移動し、Dolby Atmosなどマルチ・チャンネルのミックスのときはデスクを後方に移動するわけですが、とても簡単に動かせる機構になっています。

Genelecのスタジオ・モニターの一番の魅力は“スピードの速さ”

―― 舘さんとGenelecの出会いをおしえてください。

私がこの仕事を始めたとき、中京テレビ放送のスタジオには、アメリカの有名メーカーのスピーカーが入っていたんです。でも、細かい操作が音に反映されず、とてもミックスしにくいスピーカーでした。そんなときにプロサウンド誌が主催していた海外のスタジオ・ツアーに参加させてもらえることになり、そこで初めてGenelecの音を体験したわけです。もう30年くらい前の話で、どこのスタジオだったか忘れてしまいましたが、本当に衝撃的な体験でしたね。帰国後、中京テレビ放送の上の人に頼み込んでBスタジオのサブに導入してもらいました。それが1033Aで、当時確か500万円くらいしたのではないかと思います。今思うと、よく稟議が通ったなと思いますけど(笑)。1033Aは、スピーカー自体の大きさはそれほどではありませんでしたが、パワー・アンプがとても大きかったのが印象に残っていますね。

―― 国内ではかなり初期からのGenelecユーザーということになりますね。

そうかもしれません。当時担当していた音楽番組も、1033Aのおかげでオンエアの音が明らかに良くなりました。それまでは自分がミックスした番組をVHSに録画して見ると、「何でこんな音しているんだろう」と思うことが多々あったんです。もちろん、すべてモニター・スピーカーのせいとは言いませんが、それがGenelecに変えてから明らかに音が良くなった。これは本当に信頼できるスピーカーだなと思いましたね。

GZ-TOKYO – ミックスに自信を与える再現性とスピード感

AS 207(Dolby Atmos)のフロント1237Aと8040B

―― 名古屋のZaxx、東京のGZ-TOKYOでは、Genelecのスピーカーが全面導入されているそうですね。

はい。20年前に独立して造った最初のスタジオも1038Aをメインに、1031Aと1030Aでサラウンドのシステムを組みました。以降、スピーカーに関してはすべてGenelecで統一しています。MAルームだけでなく、編集室のスピーカーもすべてGenelecですね。編集の佐藤(注:株式会社Zaxxの専務取締役、佐藤和彦氏)がもの凄く音にこだわる人間で、MAから帰ってきて音のキャラクターが変わるのが嫌だと言うんです(笑)。ですのでウチは、MAルームと編集室で完全に音が一貫しています。

―― あらためて、舘さんにとってGenelecサウンドの魅力というと?

何と言っても音のスピードに尽きます。Genelecのスピーカーは、音の立ち上がりがもの凄く速いんですよ。入った信号がすぐに音になって出てくるというか、体感的に遅延がまったく無い。定番のガンマイクで、Sennheiser MKH 416というのがありますが、あれも他とは次元が違うくらいスピードが速いんです。だから何も考えずにコンプレッサーをかけると音が歪んでしまうんですが、Genelecのスピーカーはそのスピードにしっかり付いてくるんですよ。Neumann U 87 Aiもそうですけど、良いマイクや良いスピーカーというのはどれも音が速いですよね。
また、スピードの速さに加えて、自分が操作したことがしっかり音になって表れるというのもGenelecの魅力です。EQを触ったら、操作したまんまの音が出てくる。やはり僕らの仕事は、自分がやっていることがそのまま音になって出てくれないとやりづらい。ダメなものはダメだと分からないと、いい音はできないです。その点Genelecは、やり過ぎた部分もそのまま音に反映されますし、このスピーカーを使い始めてから自分のミックスに自信が持てるようになりました。

GZ-TOKYO – ミックスに自信を与える再現性とスピード感

AS 208のThe Ones 8351A

―― これまで、10xxシリーズ、8000シリーズ、The Onesと、大きなモデル・チェンジが何度かありましたが、サウンドの変化は感じますか?

すべて使ってきましたが、基本的には変わってないですね。30年前から同じ傾向のままだと思います。音のスピード感については、アクティブ設計によるところも大きいのではないかと思いますね。僕は十代の頃、自分でスピーカーを作ったりしていたんですけど、アンプとスピーカーの距離が離れていると、どうしても音が鈍る。アクティブ設計は、Genelecの音の良さの一助に間違いなくなっていると思います。

―― 舘さんは現在、経営者でもあるわけですが、その立場でGenelecの製品はいかがですか。

昔からそうですが、Genelecのスピーカーって壊れないんです。名古屋のスタジオは、今年でオープン丸20年になるんですけど、これまで修理に出した記憶がない。ほぼ電源入れっぱなしなのに、これは凄いことですよね。それがメーカーにとって良いことなのか分からないですけど(笑)、経営者としてはとても安心して導入できるスピーカーです。また、単に壊れないというだけでなく、20年前と比べて音もほとんど変わっていない。経年劣化を感じないスピーカーなんです。その点でも信頼できますね。

―― では今後もGenelec製品を使い続けると。

そうですね。今のところ他社のスピーカーには興味はありませんから(笑)。

本日はお忙しい中、ありがとうございました。