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GenelecSAMSmart Active MonitorGLMGenelec Loudspeaker ManagerGLMGLM

■ 機器の接続

■ GLMの起動〜レイアウトの決定

■ SAMグループの作成

■ キャリブレーションの実施

■ 測定結果の確認方法

※GLMの基本的なセットアップ方法は、動画でもご説明しております。


GLM

まず、GLMソフトウェアを使用するには、PC/Macと接続するネットワーク・アダプターと測定用マイクのセットとなる「GLM Kit」もしくは「9320A SAM™ リファレンス・コントローラー」、そして、GenelecのSAMスピーカー/サブウーファーが必要となります。

各製品の詳細は下記よりご確認ください。


まず、最初に各機器を接続します。

1. GLMのネットワーク・アダプターをUSBケーブルでPC/Macと接続。

2. LANケーブルでネットワーク・アダプターと1台目のSAMスピーカー/サブウーファーと接続。

3. SAMスピーカーの2つめのポートを活用して、デイジーチェーンで各SAMスピーカー/サブウーファーを接続。なお、接続するスピーカーの順番は関係ありません。(下図参照)

4. 測定用マイクをネットワーク・アダプターのマイク端子に接続。ボリューム・コントローラー端子とお間違えないようにご注意ください。

5. 測定用マイクをリスニングポジションの耳の高さの位置にあわせてセッティングしてください。

GLM 基本 〜キャリブレーションの手順
▲GLM を使用する際の接続イメージ。LANケーブルはGLMのコントロール信号のみ伝送する

 

GLM 基本 〜キャリブレーションの手順
▲測定用マイクは、マイクのアイコンが記載された端子へ接続する

 

 

ー TIPS ー

もし、スピーカーを壁面に設置するなど、背面のDIPスイッチの操作が難しい場所へ設置する場合は、事前に“STORED”のDIPスイッチの位置がオンに設定してください。このDIPスイッチが“ON”の位置にあることでGLMソフトウェアの設定をスピーカー側に保存でき、GLMネットワーク・アダプターをLANケーブルで常時接続しないスタンドアロンモードでも、キャリブレーションの結果を含むGLMの諸設定をスピーカーに反映して使用することができます。

GLM 基本 〜キャリブレーションの手順
▲写真左:GLMの設定をスピーカー側に保存するためには、事前に背面のDIPスイッチの「STORED」を“ON”にする
 写真右:8320、8330についてはSTOREDのスイッチはなく、常に“ON”の状態に設定されている

 


GLM

GLMを起動してみましょう。GLMは日本語でもご利用いただけます。下記の様に必要に応じて言語を切り替えてください。

GLM 基本 〜キャリブレーションの手順
▲GLMは日本語にも対応しており“Settings”->“Language”->“Japanese”で変更可(以降の解説は日本語表記を例にして行います)

 

初めてGLMを起動すると、「SAMシステムレイアウト作成」という画面が開きます。画面中心に表示される六角形(ハニカム)のグリッドを使って、スピーカーアイコンを配置します。 まずは、画面左側のプルダウンメニュー"レイアウトスタイル"から、お使いのシステム構成を選択してください。

GLM 基本 〜キャリブレーションの手順
▲全部で18のレイアウトスタイルから選択可能。ステレオ、サラウンド、イマーシブをはじめ、80以上のスピーカーを配置するような実験的なレイアウトにも対応する。お使いの環境に合わせて、レイアウトを選択

GLM 基本 〜キャリブレーションの手順
▲“レイアウトスタイル”でテンプレートを選択した際の表示例。テンプレートにはそれぞれ「どこ」に「どのスピーカー」を配置するのかを示すガイドが分かりやすく記されており、“Small”、“Medium”、“Large”、“Huge”では、ガイドの表示をあえて記載せず自由な配置が可能

 

では、スピーカーアイコンをグリッドに配置して行きましょう。画面向かって左側の“デバイス”欄にある“未配置“には、GLMネットワークに接続されているSAM対応スピーカーが表示されます。

“未配置“にあるスピーカー・アイコンを長押しすると、該当するスピーカーのLEDが点滅し、識別のためのピンク・ノイズが再生されます。例えばステレオでの使用の場合は、Rchからノイズが再生されたら“Right“セルへ、Lchからノイズが再生されたら“Left“セルへ、ドラッグ&ドロップで配置します。GLM™ネットワーク・アダプターのアイコンは、どこに配置しても問題ありませんが、わかりやすく中央付近に配置するのが良いでしょう。

GLM=基本 〜キャリブレーションの手順

システムのレイアウトが完了したら、“レイアウト確定”をクリックしてください。
続いて「SAMグループ作成」の画面に切り替わります。


SAM

SAMグループ(以下"グループ"または"グループプリセット")とは、再生フォーマットや異なるキャリブレーション/設定などをプリセットとして一括コントロールできるようにデバイスをまとめる機能です。

GLMでは、ひとつのセットアップファイルに最大10個のグループを作成することができ、キャリブレーションや設定の違いを必要に応じて切り替えることができます。この機能は、例えばステレオとイマーシブなどスピーカーの数が異なる場合の切り替えや、異なるリスニングポジションを切り替える際に便利です。

GLM 基本 〜キャリブレーションの手順
▲グループを活用することで、スピーカーのチャンネル数ごとや異なる位置での測定結果などを瞬時に切り替えることができる

 

SAM

「SAMグループ作成」の画面では、そのグループの名前や基本設定を定義することができます。まずは“グループ名”を分かりやすい名前に変更します。名前はなんでもOKです。今回は「ステレオ」とします。

GLM 基本 〜キャリブレーションの手順
▲「SAMグループ作成」画面の左カラムに用意された設定項目

 

各設定項目の内容は下記をご参照ください。
初心者の方、特別な設定の必要ない方は、デフォルト値のままでOKです!

【システムディレイ】
例えばプロジェクターやディスプレイなどを併用する際のリップシンクの調整などに使用します。ms単位で調整が可能です。

【ベースマネージメント】
サブウーファーを接続している際に使用します。この設定では、システム全体で同じクロスオーバー設定を適用する“一括”と、それぞれチャンネルごとに異なるクロスオーバーを設定する“個別”から設定できます。デフォルトは“一括”が選択されてます。

“ベースマネージメント”を“一括”で設定すると、クロスオーバー周波数を設定することができます。ステレオの場合はデフォルトで“Full band”が設定されています。また、サブウーファーがある場合はデフォルトで “85Hz”が選択されており、85Hzまでをサブウーファーが、85Hz以上を各スピーカーが再生します。このクロスオーバーは、Full bandを含む12項目から選択できます。

GLM 基本 〜キャリブレーションの手順
▲サブウーファーとのクロスオーバー周波数をどこで設定するかを決めるベースマネージメント。サブウーファーを使っていない通常のステレオセットアップの場合は、Full Bandに設定

 

【入力モード】
入力信号を“アナログ”または“デジタル”から選択できます。デジタルケーブルを使って接続(AES/EBU接続)をしていない方は、そのまま「アナログ」でOKです。デジタル入力を使用する場合はスピーカーのアイコンをクリックすると表示されるポップアップウインドウの“デジタル入力”欄から入力チャンネルを設定してください。通常は2チャンネルの信号を1本のAES/EBUケーブルで伝送するため、左のスピーカーでチャンネル(サブフレーム)A、右のスピーカーはチャンネル(サブフレーム)Bを設定します。また、通常サブウーファーは左右の信号を再生するためAとBの両方のチャンネルを有効にします。


【グループの入力感度】
グループ間のレベル・オフセットを設定することができます。例えばアナログ入力のグループとデジタル入力のグループを併用している場合に入力感度を設定することで、グループ切り替えの際の音量差を防止するなどの使い方が可能です。また、グループにおける最大ボリュームの設定などでも活用できます。


【拡張された位相直線性】
最新のThe Onesで使用できる項目です。The Onesを使っていない方は、メニューがグレーアウトしているため設定できません。The Onesを使用している場合は “ON" にしていただくことを推奨しています。この場合、低域の群遅延において変化の線形性が約100Hzまで拡張されます。 ※“拡張された位相直線性”についての詳細はこちらのブログをご覧ください。


以上の各項目を設定したら、“グループ確定”をクリックしてセットアップファイルに 名前をつけて保存してください。


GLM 基本 〜キャリブレーションの手順
▲“グループ確定”をクリックすると、セットアップファイルとして保存するためのウインドウが立ち上がるので、任意の名前をつけて保存する

 

保存が完了すると、GLMのキャリブレーション・アルゴリズム「AutoCal」の設定画面に切り替わります。


「AutoCal - グループのアコースティックキャリブレーション」の画面は、実際にキャリブレーションのための音響測定を行う画面となります。

GLM 基本 〜キャリブレーションの手順


ー AutoCalとは? ー

AutoCalとは、GLMに実装されたスピーカーの自動補正機能です。Genelecのスピーカーは、フラットな特性になるように、工場出荷時に全台調整されてから出荷されているのですが、スピーカーをお部屋に設置すると、どうしても壁や机などの反射といったお部屋の影響は避けられないファクターになります。AutoCalは、これら反射などにより引き起こされるサウンドへの悪変化を自動的補正し、信頼のおける「リファレンス・サウンド」を実現するという仕組みです。

お使いのコンピューターの画面上にGLMソフトウェアが起動するため、GLMソフト内で実行するAutoCalによるキャリブレーション自体もコンピューター内にて行われているように見えますが、実は最新版の「AutoCal 2」はクラウド上で動作しています。そして、シリアル単位で無響室にて測定されたスピーカーの詳細な情報を、おなじく校正された付属のマイクで測定したルーム・アコースティックの情報と照合して補正EQのカーブを演算し、その補正結果は、コンピューター内のソフトウェアではなく、お使いのスピーカー内のDSPに保存されます。

AutoCalでの自動補正は、オーディオ・インターフェースやPCの性能など、他の機材の影響を一切受けないため、非常に精度の高いキャリブレーションが可能なことが最大の特徴といえます。また、キャリブレーションにかかる時間も一般的な2chの場合ではわずか1分もかかりません。多くのスピーカーを必要とする11.1chでもおよそ3、4分程度で完了。お部屋のレイアウトが変わっても、気軽にキャリブレーションをやり直すことができることも特徴です。

 

では、キャリブレーションの作業を行なっていきましょう。

まずはAutoCalによる測定の前段階として、GLM Kitに付属するマイクのシリアルナンバーが、この画面上に正しく表示されていることを確認してください。

マイクのシリアルナンバー情報を用いて、測定マイク側の特性補正が自動的に適応されます。ご利用のマイクシリアルと画面上のシリアルが一致していない場合は、画面上のシリアル表示欄をクリックし、正しいシリアルナンバーを入力してください。

GLM 基本 〜キャリブレーションの手順
▲GLM Kitに付属する測定用マイクロフォンも、シリアルによって特性を管理。測定前に、シリアルナンバーが一致していることを確認

 

続いて“キャリブレーションモード”を設定します。ここではプルダウンメニューで3つの項目を設定することができます。


1つ目のプルダウンメニューでは、測定ポジションに関するモードを選ぶことができます。

まずはピンポイントで測定する“シングルポイント”を選択してください。こちらが推奨のモードとなりますので、まずはこのシングルポイントを試してみてください。

マルチポイント”は、最初に測定したポイントから半径50cmの範囲内で複数箇所(任意の数)測定し、その平均値に基づいて補正を行うモードです。結果としてスイートスポットが少し広がりますが、測定ポイントの数と補正結果の精度はトレードオフの関係にあることにご注意ください。


2つ目のプルダウンメニューでは、測定後に適用されるEQフィルターについて“左右同一のEQ”か“個別のEQ”かを選択することができます。

デフォルトでは“左右同一のEQ”が選択されています。“左右同一のEQ”は、中高域に同じEQフィルター設定を適用します。ただし低域においては、“左右同一のEQ”を選択しても左右チャンネルそれぞれで個別のEQフィルターを適用するように設計されています。低域は中高域よりも単位周波数ごとの音変化が激しく、また波長が長いため、スピーカーの配置や部屋に置かれているもの(家具や機器など)の影響を受けやすく、同じレスポンスを得ることは難しいです。そのため、低域に関しては左右チャンネル個別でEQを適応することが有効となります。一方の中高域は、同一のEQを適用することでステレオイメージやファンタムセンターが改善されます。

つまり、この“左右同一のEQ”設定は、それぞれのいいとこ取りをしたものとなります。したがって左右のスピーカーのセッティング環境が異なる場合も まずは、この“左右同一のEQ”設定をお勧めします。


3つ目のプルダウンメニューは、デフォルトでクラウド上で動作する“Cloud AutoCal 2”が選択されています。お使いのコンピューターがインターネットに接続されていることを確認し、この「Clound AutoCal 2」を使うことを強く推奨します。
インターネット接続がない場合のみ、GLMのダウンロードページから事前にLocal AutoCalパッケージをダウンロードしたうえで、“Local AutoCal”ご使用ください(Local AutoCalは、従来のAutoCal 1に相当します)。

GLM 基本 〜キャリブレーションの手順
▲インターネット接続がないときに使用するLocal AutoCalパッケージはGLMのダウンロードページで入手可能

 

これらの作業が完了したら、最後に“キャリブレーション開始”をクリックしてください。すると、「測定準備」というウインドウが立ち上がります。

この画面では、測定の際の注意事項を最終確認できるほか、GLM 4.2より実装された新機能であるGRADEレポートの作成に関わる設定が行えます。

GLM 基本 〜キャリブレーションの手順
▲「測定準備」の画面

 

GRADEレポートは、GLMの測定をもとにリスニング・ルームやモニタリング・システムの状況を詳細に分析したレポートを作成する機能です。このGRADEレポートは、スピーカーの配置やリスニング・ポジションの微調整、ルーム・チューニングの見直しやベースマネージメントの最適化など、モニタリング/リスニング環境をさらなる高みへ導くための効果的な情報となります。

GRADEレポートの入手は、MyGenelecにログインした状態で、アプリケーション・メニューの「サービス」から「GRADEレポートの注文」にて行いますが、この「測定準備」の画面にて、部屋のサイズをできるだけ正確に入力することでGRADEレポートの結果がより正確なものになります。これは、RT60など部屋の大きさと関係する内容の信頼性がより高くなるためです。また、部屋のサイズを入力する際に一つ注意点があります。ここで言う「サイズ」は、低音をある程度跳ね返すような硬い壁までの距離です。特にスタジオでは壁に吸音材などを設置しているため、実際の壁までの距離は、さらに概ね50cm程度の奥行きがあります。


ー TIPS ー

GRADEレポートは、英文でのご提供となりますが、主要な項目はこちらのページにて日本語での解説をご確認いただけます、そして、12回分までのレポートが無料でご利用頂けます。また、GRADEレポートの作成には、MyGenelecへの登録が必要となり、アカウントに登録されたメールアドレスへPDFで送付されます。MyGenelecアカウントは、お使いのGenelec製品の登録*や、キャリブレーションデータのクラウド管理など、様々なメリットがありますので、この機会にご登録をご検討ください。

*Genelec製品登録を行うと、5年間の延長保証となります。


測定マイクのポジションを確認したら、最後に“測定”をクリック。いよいよ測定開始です。

カウントダウンが開始され、左右のスピーカーからスイープ音が鳴り、測定が開始されます。測定中はエアコンの動作音など周囲の物音にご注意ください。測定の際は、大きめの音量で、スイープ音が鳴りますのでご注意ください。

測定および解析が完了すると、「キャリブレーション完了」というポップアップウインドウが開きます。基本は「保存」で問題ありませんが、例えば測定中に何らかの物音が鳴ってしまった等のトラブルがある場合は、「キャンセル」をしてもう一度測定を行ってください。

GLM 基本 〜キャリブレーションの手順
▲キャリブレーションが完了した際に表示される画面。もし測定中に物音が鳴ってしまった等のトラブルがあった場合は、“キャンセル”をクリックして測定し直すことも可能

 

「キャリブレーション完了」のウインドウを閉じると、再び「AuroCal - グループのアコースティックキャリブレーション」の画面に戻ります。最後に「AutoCal確定」をクリックすると、GLMのメイン画面へと切り替わります。

GLM 基本 〜キャリブレーションの手順


測定結果を確認する

G測定結果は、メイン画面から確認することができます。メイン画面の左下に用意されるプルダウンメニューにて、スピーカー・アイコンをクリックした時に何を表示するのかを設定できます。測定結果の確認をする場合は「編集」に設定してアイコンをクリックしてください。「Acoustic editor」ウィンドウが表示されます。

GLM 基本 〜キャリブレーションの手順
▲測定結果の確認は、メイン画面の左下のプルダウンメニューを「編集」に設定して、スピーカーのアイコンをクリック

 

この「Acoustic editor」では測定した周波数特性が表示され、GLMでは最大20バンド(12xxや82xxではモデルによってバンド数が変わります)のEQフィルターを用いてどのような処理を行い、どのような特性へと補正しているのかが確認できます。また、それぞれの項目はマニュアルで微調整することも可能です。

GLM基本 〜キャリブレーションの手順
▲「Acoustic editor」で表示される測定結果のグラフ。赤い線はスピーカーが設置された部屋で実際に測定された特性、青い線は補正フィルターのカーブ、緑の線は補正フィルター適用後のスピーカーの特性を示している。左右のレベル差を補正するレベル補正や、各スピーカーからの距離の差を補正する「Time of Flight Delay」(到達時間補正)もこの画面で確認できる(*画面は8341のもの)

 

GLMではこのように測定結果を簡単に確認することができ、さらにGRADEレポートも併用することにより、スピーカーを設置した部屋がどのような音響特性を持ち、どのような改善が必要なのかを数値として把握することができ、吸音や拡散など、ルームチューニングに対しても科学的なアプローチができるようになります。

今回は、一般的なステレオシステムの場合を例に、キャリブレーションの基本的な手順をご紹介しました。直感的な操作を実現したGLMのスピーディかつ高精度なキャリブレーションは、どこでも意図した通りのバランスで再生されるミックスを作り出すための強力なツールとなります。