Genelec "" - AMBIENT KYOTO 2023

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アンビエントをテーマとし、音と映像、光を駆使した日本最高峰の視聴覚展覧会として、昨年からスタートしたAMBIENT KYOTO。世界的文化都市として知られる京都を舞台に、今年も2023年10月6日(金)〜12月31日(日)まで開催されています。

Genelecで表現される "アンビエント" のカタルシス - AMBIENT KYOTO 2023


昨年は、アンビエント・ミュージックの創始者、ブライアン・イーノの作品が展示される展覧会として開催され、音楽ファンはもとよりミュージシャンやアーティストに至るまで、非常に多くの来場者で賑わいを見せました。第二回目となる今回の開催では、メインの会場となる京都中央信用金庫 旧厚生センターに加え、坂本龍一と高谷史郎によるコラボレーション作品を展示する京都新聞ビル地下1Fを展覧会場として追加。さらには東本願寺・能舞台で行われるテリー・ライリー、国立京都国際会館 メインホールで行われるコーネリアスといった2つのライブや、Podcastで公開されている朝吹真理子による朗読など、様々な角度から「アンビエント・ミュージック」に浸ることのできるアプローチを行っています。

そんなさらに規模を拡大したAMBIENT KYOTO 2023でも、スピーカーとしてGenelecのスタジオ・モニターが採用されました。使用されているのは、バッファロー・ドーターと山本精一の作品が展示される京都中央信用金庫 旧厚生センターの一室です。AMBIENT KYOTO 2023の音響ディレクション担当したレコーディング・エンジニアのZAK氏は、今回の展示会の狙いについて、次のように話します。

Genelecで表現される "アンビエント" のカタルシス - AMBIENT KYOTO 2023

バッファロー・ドーターと山本精一の作品の展示で使用される3階の部屋にシーリング・マウント8000-436Bで取り付けられた8341A


「今回、音響ディレクションを行うにあたって目指した音という意味では、実は具体的なものはないんです。AMBIENT KYOTOという名前でやるにあたって、ずっと "アンビエント" とは何か、と考えていました。ただ、その結論が出るわけではなく……。これは、ひとつのもので括れるものではないので、音だけでいうと、もう単純に気持ちが良いかどうか。それに尽きます。あまりにもアンビエントに意味性を求めすぎるから、今回はそうした意味の無いところでやってみてもいいんじゃないかな、と思ったんです」

Genelecで表現される "アンビエント" のカタルシス - AMBIENT KYOTO 2023

AMBIENT KYOTO 2023にて音響ディレクションを担当した、レコーディング・エンジニアのZAK氏


実際に会場へ足を踏み入れると、そこは暗闇の中にある光と映像が目に飛び込み、サウンドによって心地よく包み込まれる感覚に引き込まれます。その体験はまさにイマーシブ。展示される作品も、"アンビエント" と聴いて想像するような環境音に近いものから、より音楽的要素を強くしたものまで多種多様です。

Genelecは、京都中央信用金庫 旧構成センターの3階に上がった一番広い部屋で使用されています。設置されているのは、天井にマウントされた4台の8331と8台の8341、そして透過型スクリーンの後ろにスタンドで設置された4台の8351です。およそ150㎡という部屋を斜めに使い、それぞれにシンメトリーとなるように設置された10.1.4chという変則的な音響システムを組む環境で、Genelecの3ウェイ同軸モニターとなるThe Onesを選択した理由を、ZAK氏は次のように話します。

「今回、この部屋で展示されるバッファロー・ドーターの作品は、音色に関して非常にビートが強く広がりのある音像で、そのパンチのある音がきちんと再現されること、解像度が高いこと、それと音の軸が揃っていることが重要でした。こうしたモニター・スピーカーの性能の高さに加え、かつ透過型スクリーンの後ろでもしっかりと音が聴こえることが求められました。そこで最適だったのが、The Onesシリーズだったんです」

Genelecで表現される "アンビエント" のカタルシス - AMBIENT KYOTO 2023

4台の8331Aは、できるかぎり天井に近づけて設置したいという観点から、下地を追加した上で8000-402Bを使用して取り付けられている


ZAK氏のコメントの通り、来場者がそれぞれに "アンビエント" を自由に感じることができる心地よい音、つまりニュートラルな音が求められたわけですが、そこには3ウェイ同軸モニターのThe Onesが非常にマッチしていたそうです。

実際に再生されるバッファロー・ドーターとアンビエント的な静けさの方向にシフトされた山本精一の作品は、それぞれが異なる雰囲気を持った楽曲です。つまり、この振れ幅の大きいそれぞれの作品に対応する再生能力が求められたわけですが、そこで大きな力を発揮したのがGLM(Genelec Loudspeaker Manager)でした。

Genelecで表現される "アンビエント" のカタルシス - AMBIENT KYOTO 2023

部屋に入って左右にある透過型スクリーンの裏には、8351Bを2台ずつ設置


GLM

「今回の会場は、意図的にメーカーの異なるサブウーファーも使っていますので、システム全体で一括でオート・キャリブレーションを行うという使い方はしていません。ただし、GLMの良いところは、測定したらすぐにそれぞれのGenelecのモニターがどういう状態で鳴っているのか視覚的に分かるところです。部屋の真ん中に柱があったりと、この部屋には様々な制約があり、また最終的なスピーカーの位置は現場で決めたのですが、まずは、GLMで測定して再生状態を確認して、そこからGLMのEQを使って、自分たちが狙うサウンドを作っていったんです。EQのグラフもリアルタイムで動くので、非常に分かりやすく、非常にスムースな作業を行えたと思います」

そしてもうひとつ、豊富なマウント・アクセサリーの使いやすさも大きな力となったと話します。

「スピーカーの設置位置は最後まで追い込んだので、途中で角度の調整や取り付けのやり直しなども行いました。その際の角度の調整も非常に簡単に出来たし、スピーカーそのもののサイズも取り回しがしやすかったです」

アンビエントという非常に広い意味を持つ世界感を表現するにあたり、意味性を持たせず、来場者が自由に感じる空間を作ること。こうした極めて抽象的な体験の表現のなかでも、Genelecのスタジオ・モニターは大きな役割を担っています。

「"アンビエント" ってひとことで言っても、国ごとにイメージも違うし、個人個人でも違う。僕自身のなかでも違う。今回もいろんな人に "アンビエント・ミュージックでどういうものを想像する?" と聴いたりしたんですけど、やはり曖昧な答えしかないんです。ただ、ここを線引きする必要はないというか、線引きした瞬間すごく停滞するというか、拡大していくスピードが遅くなる、もしくは止まってしまう。僕はあまりそういうのが好きじゃないし、そういうやり方も採りませんでした。それと、カタルシスみたいなものにだけ重点を置いてサウンドを作りました。アンビエントには多分、こうしたカタルシスの部分もあると思うんですよ。ですので、アートピース(芸術作品)とかそういうことだけではなくて、だだ現象として味わってもらえれば、と思います」


AMBIENTO KYOTO 2023

参加アーティスト
【展覧会】坂本龍一 + 高谷史郎、コーネリアス、バッファロー・ドーター、山本精一
【ライヴ】テリー・ライリー、コーネリアス
【朗読 朝吹真理子

会場
京都中央信用金庫 旧厚生センター(展覧会)
京都新聞ビル地下1階(展示会)
東本願寺・能舞台(ライブ)
国立京都国際会館 メインホール(ライブ)

開催期間 2023年10月6日(金)~2023年12月31日(日)
※休館日:11月12日(日)、12月10日(日)
※テリー・ライリーのライブ:10月13日(金)、10月14日(土)
※コーネリアスのライブ:11月3日(祝・金)

開館時間 9:00〜19:00 ※入場は閉館の30分前まで

Genelecで表現される "アンビエント" のカタルシス - AMBIENT KYOTO 2023