Built to Trust | -

Genelec1035A19891035A1035A1235A

1931年(昭和6年)創業と長い歴史を誇るレコード会社、キングレコード。その初代ハウス・スタジオは1936年に東京都文京区の音羽に開設されました。その後、1964年には2代目となるスタジオが音羽通り沿いに完成。そして1996年、最新の設備を誇る3代目のハウス・スタジオ「キング関口台スタジオ」が設立されました。最新の設備を誇る2つのレコーディング・スタジオ、そしてマスタリング・ルームは、都内でも有数の「音の良いスタジオ」としてミュージシャンやプロフェッショナルのみならず、音楽ファン、オーディオ・ファンからも一目置かれる存在です。

この長い歴史の中で多くの名作を生み出してきたキングレコードのハウス・スタジオは、Genelecのラージ・モニターとも深いゆかりを持っています。

増田「今回、1235AにアップグレードしたSTUDIO 2の1035Aは、もともとは1990年頃に旧音羽スタジオの1スタに導入されたものです。1996年のスタジオの新設の際にこの場所に移設しました。ちなみに、実はキング関口台スタジオにはSTUDIO 1とYK STUDIOにも1035があり、いまなお現役で稼働中です(STUDIO 1は1996年導入の1035B)。特に1989年に導入されたYK STUDIOの1035Aは、“これが日本で初めて入ったGenelecだった”と聞いています。我々の先輩にあたる当時のエンジニアが評価をして決めたわけですが、いま考えても英断だったと思いますね」

キング関口台

お話をおうかがいした面々。写真左からレコーディング&マスタリング・エンジニア 吉越晋治氏、録音部長 増田 晋氏、レコーディング・エンジニア 高橋友一氏


導入以来、35年近く経たいまでも1035Aはキング関口台スタジオにとって特別なリファレンスとして活躍し続けてきました。今回、なかでもメイン・スタジオとして稼働するSTUDIO 2の顔でもあった1035Aが、レトロフィット・アップグレードを経て1235Aへと生まれ変わったのです。リファレンス・スピーカーが変わるということはエンジニアにとって大きな出来事ですが、「無理なくというかストレスなくというか、すっと入ってくことができました」と、吉越氏がそのサウンドの印象を話します。

キング関口台

レトロフィット・アップグレードでは、長年慣れ親しんだエンクロージャは引き継がれ、見た目はほとんど変わることなく最新のテクノロジーを投入したラージ・モニターへと生まれ変わる。写真は、アップグレードの作業中の様子


吉越「音の印象も以前とさほど変わらず、その上で新たにGLMによる補正機能が使えるというメリットが加わるのはいいなと思いましたね。それと、大音量で効いた時の歪み感も減ったな、という印象があります。ハイファイ感がより出たという感覚です」

高橋「聴こえ方に違和感がないなかで、よりモダンな音になったという印象がありましたね。特に感じるのは低音の聴こえ方。切れが良くて、ちゃんと制御できている感じで、良い意味で変わった部分だと思っています」

エンクロージャはそのままに、ユニットやアンプを入れ替えるサステナブルなアップグレードを行うのがレトロフィット・アップグレードの大きな特徴です。中身は全て最新世代に入れ替わることになりますが、なかでも特に大きな進化となるのが、GLM(Genelec Loudspeaker Manager)ソフトウェアによる、強力なキャリブレーションや優れたモニター・コントロール機能への対応です。

高橋「そもそもいいスピーカーなので、キャリブレーションをオフにしても十分に良いサウンドです(笑)。GLMの魅力はスピーカーをフラットな特性に整えてくれることもありますが、EQ的に使えることにも大きな魅力を感じています。以前までは基板で調整していたわけですが、1235Aとなったことで、画面上で特性が可視化された状態で音を聴きながら微調整できるようになったことはすごく良いと思います」

先述のとおり、このキング関口台スタジオでは1035Aが35年近くにわたりリファレンスとして使用されていました。設置環境に対してスピーカーを最適化できることはGLMの大きな特徴ですが、一方で瞬時にオフに切り替えられることも重要な機能のひとつとなります。これにより、長年にわたって慣れ親しんできた1035Aのサウンドと、さらに強力な機能を備えた1235Aのサウンド、その双方を両立させることができるのです。こうしたフレキシブルな使い勝手は、様々なエンジニアが使用する商用スタジオにおいて、非常に柔軟な対応力を発揮しています。

キング関口台

レトロフィット・アップグレードによって生まれ変わったキング関口台スタジオ「STUDIO 2」の1235A


キング関口台スタジオがGenelecを使い続ける理由には、長年にわたっても忠実な音、つまりリファレンスを提供し続けていることにあります。

高橋「モニター・スピーカーとしての正しい音が聴こえることは、素晴らしいですよね。キング関口台には今回アップグレードした1235Aや1035A以外にも多くのGenelecのモニター・スピーカーがありますが、サイズが変わっても、また年代が変わってもサウンドの印象が変わらないことが、信頼して使い続けられるポイントだと思います」

吉越「関口台スタジオのマスタリング・ルームでもGenelecを導入しています。つまり、ここで仕事をするすべてのマスタリング・エンジニアにとって、Genelecの音がリファレンスになっているんです」

キング関口台スタジオで制作される音源は、高音質な音にこだわりの強いオーディオファイルも評価するなど、クオリティの高さにも定評があります。そこには良好な音響をもたらす空間、マイクやレコーダーをはじめとする機材など様々なピースがありますが、そのいずれもが最終的にGenelecのスピーカーでの出音が基準となっています。

増田「私たちはGenelecの優れたラージ・スピーカーを基準に、マイキングなど音作りを決め、レコーディングやミックス、マスタリングを行い、作品としてお届けしています。“作られた音”ではなく本当にナチュラルな声や楽器の良い響きを体験いただければと思いますね」

キング関口台

およそ35年にわたりキング関口台でのレコーディングを支えてきたSTUDIO 2の1035は、1235Aとしてすでに最新のレコーディングで使用されている


1035Aからレトロフィット・アップグレードを経て進化を果たした、STUDIO 2の「1235A」。長年のリファレンス・サウンドとこれからのオーディオ・モニタリング環境を高度に融合したラージ・モニターとして、キング関口台スタジオと共に歩み続けます。

2 x 1235A SAM™ スタジオ・モニター ※レトロフィット・アップグレードによる1035から1235へのアップグレード