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AURAGenelecSAMSmart Active MonitorGLM9320A

1982年に創業したAURAの強みは、映画をはじめとする映像作品の字幕制作にあります。そのホームページに掲げられたキーワードは、「字幕のグローカライズソリューション」。これはつまり、海外の映画を国内で上映・配信するために日本語字幕を付けること(ローカライズ)、邦画作品の海外展開で必要となる各国版の字幕制作(グローバライズ)という両方向のニーズに対応することを意味しています。同社が年間に扱う映像作品は約500本以上。2025年には長年の功績に対し、シネマ夢倶楽部賞(日本ファッション協会主催)が贈られました。

洋画と邦画、それぞれの字幕制作はほぼ半々。近年、ますます海外で注目されている日本の映像作品の字幕制作は年々増えており、例えば第94回アカデミー賞(国際長編映画賞)受賞『ドライブ・マイ・カー』、2024年アヌシー国際アニメーション映画祭の長編アニメーションコンペティション部門選出されたスタジオポノック作品長編映画『屋根裏のラジャー』なども、同社が字幕を手掛けた作品です。

字幕制作とサウンドの関係は、その制作プロセスを知ると非常に密接な関係にあることが分かります。

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写真左から、システムデザイン室 木村 淳一氏、本間 利也氏

本間 「字幕制作では、お客様から作品の本編マスターと呼ばれる映像素材や完成台本を支給いただきます。それを基に翻訳者さんが字幕のために翻訳し、我々は翻訳された字幕データを受け取り、作業をしていきます。弊社には字幕の校正をする専任スタッフがおりまして、まずは言葉の使い方や言い回し、表現をチェックします。さらに、校正だけではなく字幕演出のご提案を含めたコーディネートを行っております。劇場で映画をご覧になるお客様に違和感なく読んでいただくこと、さらに言えば読んでいたことさえ意識させない……ある意味、存在感がなくなり、作品に没入して楽しんでいただくこと。それが私たちの目指している字幕の在り方です」

こうした志しがあるからこそ、プレビュールームが果たす役割も非常に重要です。

本間 「制作段階ではお客様や翻訳者さんが立ち会い、リアルタイムで字幕を編集し、再生して確認しながらブラッシュアップする字幕シミュレーションという工程があり、劇場に近い環境であるこのプレビュールームで行うことがあります。また、初号をはじめとする関係者向け試写も行います。字幕が完成したあと、弊社では劇場で上映するDCP(Digital Cinema Package)を制作しています。DCPを納品する前の段階では、出荷前の最終的なクオリティ・チェックもここで行いますし、翻訳から納品までの間にプレビュールームは何度も使用される場所なんです」

木村 「字幕のチェックに集中するには、映像や音声を正確に確認できる環境が必要であり、このプレビュールームでは安心して使用できる機材を選定しています」

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以前は同じ神楽坂にオフィスとプレビュールームを構えていたそうですが、2025年4月のオフィス移転に伴い刷新されたプレビュールームではシステムも一新することになります。

本間 「更新する前のプレビュールームの音響も当時として最善のシステムを使用していましたが、スペースの都合で機材や信号経路が複雑だったため、オペレーションを改善したいと考えていました。新しいプレビュールームでは業務用シネマ・プロジェクターやサウンド・プロセッサーを中心としたシステムに一新し、映像も音も以前より高いクオリティを持ち、なおかつよりシンプルなオペレーションで試写が行える環境を作りたいという狙いがありました」

木村 「目指したのは、お客様にとっては字幕はもとより音も映像も正確にご確認いただける環境、そして社内スタッフにとっては使い勝手のいい環境です」

こうした要望を実現するべく7.1chサラウンドを構成するスピーカーとして導入されたのは、7台の8350Aと2台の7360A サブウーファーです。

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「Genelecスピーカーには、音楽のレコーディング・スタジオでよく活用されていて、“Genelec=音楽”というイメージを持っていました」と語る本間氏は、セリフや効果音など様々な音が飛び交う映画のプレビュールームでスピーカーがどのように鳴るのかと興味津々だったそうです。その音を初めて聴いた時も、「もう一発目の音で感動しました。音も映像も、前のプレビュールームから何段階もアップしていると感じました」と振り返ります。

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正確に映像を確認できるよう画質を重視した結果、非透過型スクリーンを採用し、その下にL/C/Rの8350Aおよび7360Aを設置

このプレビュールームで特徴的なのは、前方のスピーカーの配置です。字幕に関わるセリフやナレーションの聴き取りで重要となるセンターとL-Rはスクリーンの下に設置されています。通常の映画館では透過型スクリーンの後ろにスピーカーを配置しますが、AURAの場合は、正確な映像の確認ができるよう、画質を重視した非透過型のスクリーンを採用していることが関係します。AURAがこだわった機材選定と配置になっているのです。

本間 「座席からは少し見上げるような角度でスクリーンを観ることになりますが、スピーカーが下にあることは全然感じません。初めて聴いたときはそのことにも驚きました」

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サイド/リアに設置された8350Aは、ウォール・マウントの8000-402を使用

今回の機材選定とシステム設計/施工は、ジーベックスの相川 敦氏が担当。なお、当プレビュールームの音響設計はソナが手掛けられています。

相川 「音響面ではB-Chain(注:映画館における音響調整のための統一基準)がとれる機材をとのご要望があり、これに対応するプロセッサーやスピーカーを選んでいます。そして、スピーカーの調整はGLMでフラットな状態にしたところから、X-Curve(注:劇場やダビングスタジオで用いられる周波数特性:ISO 2969)をかけていくという手順で行いました」

今回の導入で、もう一つのキーとなったのが「よりシンプルなオペレーションで試写が行える環境」の実現のために採用されたGLMソフトウェアとリファレンス・コントローラー9320Aの存在です。コントローラーというと大規模なシステムになりがちですが、Genelecの場合はGLMと9320Aで完結させることができます。

木村 「現場スタッフのオペレーションは、フィジカルで操作できる9320Aがあることで、シンプルで間違いのない操作ができています。非常に使いやすいという印象ですね」

本間 「結果として、GLM用のPCとコントローラーだけがこの部屋にあるというシンプルな状態にすることができました。ボリュームを含むモニタリングの調整はこのコントローラーだけで可能です。ジーベックスさんに調整していただいたレベルを超えた過度なボリュームにならないよう、GLMで最大音量も設定できるので安心ですね」

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デスクには、GLM用のPCとそれをフィジカルにコントロールできる9320Aを設置。操作性とクオリティ・チェックの両面で、オペレーションが非常に楽になったという

両氏はまた、日々の運用におけるGLMによるスピーカー管理の有用性にも非常に満足しているようです。

本間 「GLMの画面を確認すればどのスピーカーが鳴っているのかが瞬時に分かります。音がクリップした場合はスピーカー本体のLEDだけでなく、画面でも視覚的に確認できるので、お客様からお預かりしているマスター素材のクオリティ・チェックでも精度が増しており、重宝しています。全てのオペレーションがとてもシンプルになったことはスタッフの目線からも大きなメリットだと感じています。お付き合いが長く、以前のプレビュールームにも来ていただいたことがある方には、“すごく音が良くなったね”と言っていただけるなど、お客様にも好評をいただいています。映像と音についてはまったく心配ない環境ができましたので、字幕のチェックに一層集中できるようになったのは大きいですね」

木村 「私たちにとってそこは本当に大事な部分で、字幕のチェックに来ていただいたお客様が音や映像に何か引っかかりがあると、そこに気を取られてしまい、集中の妨げになってしまいます。その意味でも、良い状態のプレビュールームにできたと感じています。この部屋を含めた弊社の“字幕グローカルソリューション”によって、お客様の作品を広めていくお手伝いができればと思っています」

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日本が誇る字幕文化を背負ってきたAURA。本間氏は最後に、仕事にかける想いを次のように語ってくれました。

本間 「お客様にとっては一つひとつが大切な作品であり、一方、翻訳者さんからすればまるで我が子のような存在でもあります。そうしたお気持ちが作品をご覧になる方たちに伝わり、楽しんでいただくために私たちとしてもこだわりを持って仕事に臨んでいます。お客様や翻訳者さんの意図を汲み取りながら、AURAならではの字幕演出をご提案し、字幕のブラッシュアップを何度も繰り返し行うなど、私たちも皆様と同じ想いを持って作品を送り出しています。字幕が完成したときの達成感は格別で、やり甲斐や楽しさを感じる瞬間ですね」


映画やTVなど様々な映像作品の翻訳・字幕の制作に豊富な経験と実績を持つ字幕クリエイティブファーム。高品質な翻訳・字幕制作とスピーディーで臨機応変な対応でクライアントのビジネスを支援。映像作品のファンの輪を世界へと大きく拡大する。これまでに同社が字幕制作を手掛けた主な作品は以下の通り。

▼邦画の海外向け字幕制作
「ドライブ・マイ・カー」(2021) 第94回アカデミー賞 国際長編映画賞受賞
「屋根裏のラジャー」(The Imaginary) (2023) 2024年アヌシー国際アニメーション映画祭 長編アニメーションコンペティション部門選出

▼洋画の日本語字幕制作
「ありふれた教室」(2022) 第73回ベルリン国際映画祭 W受賞
「アイム・スティル・ヒア」(2024) 第97回アカデミー賞 国際長編映画賞受賞

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