Blog | GLM解説
拡張された位相直線性とは?

「拡張された位相直線性」機能は、3ウェイ同軸設計のThe Onesシリーズを対象として、GLMのVer.4.1から新たに搭載された機能です。AutoCal 2 キャリブレーション・アルゴリズムから適用できるこの機能は、The Onesシリーズ使用時にGLMソフトウェア上から適用のON/OFFを切り替えることができます。
▲「拡張された位相直線性」機能は、The Onesシリーズがシステム内にある際にGLMの「SAMグループ作成」の画面内にてON/OFFの切り替えが可能。デフォルトの設定は「ON」
「拡張された位相直線性」機能は、デフォルトの設定では「ON」となっていますが、これはユーザーの使用環境に合わせて「OFF」とすることも可能です。この機能を適用すると、スピーカー再生時の位相の直線性が拡張され、約100Hz付近まで低域周波数帯におけるグループ・ディレイ(群遅延)特性が向上します。
下記は、The Onesの8341モデルのグループ・ディレイを表したグラフです。「拡張された位相直線性」機能がOFFの時とONの時で、グラフのカーブが変化していることがわかります。
▲「拡張された位相直線性」機能による8341Aのグループ・ディレイ(群遅延)の変化。「ON」(写真下)では、グループ・ディレイの平坦な特性が約100Hz付近までシフトする
そして、下記が2ウェイのSAM™シリーズ「8330A」のグループ・ディレイを表したグラフです。8341モデルの「拡張された位相直線性」機能ONの時のグループ・ディレイと非常に近い結果となっていることがわかります。
▲2ウェイとなるSAMシリーズの8330Aのグループ・ディレイの変化
100Hz付近まで平坦な特性を持つ
この機能によって、3ウェイ同軸設計のThe Onesの位相直線性を拡張させることには、以下のような利点があります。
① スピーカーから再生される音声信号において、同じタイミング(時間軸)で発する周波数帯域の範囲が広がるため、ステレオ再生時におけるステレオ音像と音の解像度が向上する。
② 軸外の音響特性の向上と、短いリスニング距離で試聴するウルトラ・ニア・フィールド(UNF)モニタリングにおける音像の向上が期待できる。
③ スマート・アクティブ・2ウェイ・モニター(SAM™)シリーズのグループ・ディレイ特性にマッチングさせることができるため、3ウェイのThe Onesシリーズと2ウェイのSAMシリーズを併用し、再生システムを組み合わせることができる。そのため、スピーカーの選定およびシステム構築において、ユーザーの自由度が高まる。
上記の「拡張された位相直線性」機能の利点のうち、特に③は、これからイマーシブでの制作環境を整えようとしている方にはメリットが大きいと思います。例えば、LチャンネルとRチャンネルだけは、The Onesの8341を使用して、その他のサラウンドスピーカーは全て2ウェイの8320にするということが可能になり、コスト面で大幅にシステム構築のハードルを下げることが可能です。
ということで、2ウェイのSAMシリーズとのシステム構築について、より詳しくご紹介してゆきたいと思います。
下図は、実際に3ウェイ同軸設計のThe Onesと同サイズの2ウェイのSAMモデルを用いて、サイン・スイープ信号を再生し、測定を行ったものです。音響測定は、指定の場所に一台のスピーカーを設置・測定し、順番に対象のスピーカーを入れ替えながら同条件の下で行っています。
リスニング・ポジションにおいて、両モデルのスピーカーを同時に試聴すると仮定し、各モデルで得た測定データを音響解析ソフトウェアにて合成することで、両モデルを組み合わせた際の音響的な変化を観測します。
サイン・スイープ信号を3ウェイのThe Onesモデルと2ウェイのSAMモデルを同時に再生し、「拡張された位相直線性」を「ON」(濃いオレンジの線)にした場合と、「OFF」(薄いオレンジの線)にした場合の音響特性グラフは、下図のようになります。
※画像内、緑色の枠線「03 Frequency」の欄を参照してください。
▲「拡張された位相直線性」機能を「ON」にした場合(濃いオレンジ)と、「OFF」にした場合(薄いオレンジ)の特性を重ね合わせたグラフ。「OFF」では、およそ500Hz付近に生じていたディップが、「ON」とすることで改善している(使用スピーカーは、3ウェイのThe Ones 8341Aと2ウェイのSAMモデル 8330A)
The Onesの「拡張された位相直線性」が「OFF」の場合、低域のグループ・ディレイの平坦な特性は約500Hz近辺まで維持されていることに対し、2ウェイのSAMモデルは、約100Hz近辺まで平坦なグループ・ディレイの特性を持ちます。音響特性グラフを合成した結果、「OFF」の場合は両モデルのグループ・ディレイ特性の違いによる音響特性の低下が確認できます(薄いオレンジ)。
一方、「拡張された位相直線性」が「ON」の場合、低域のグループ・ディレイの平坦な特性が約100Hz近辺まで拡張され、2ウェイのSAMモデルとグループ・ディレイの特性とマッチングすることができます。音響測定グラフの合成結果を見ると、「ON」の場合は音響特性の低下は確認できません(濃いオレンジ)。
このThe Onesの「拡張された位相直線性」の機能によって、ユーザーは3ウェイのThe Onesモデルと2ウェイのSAMモデルを組み合わせることも想定し、より自由なシステム構築を行うことが可能となります。
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