ドイツ・サッカー博物館の臨場感あふれるイマーシブ体験をSmart IPが実現

Genelec Smart IPが実現する、アートとサッカーのイマーシブな融合
この企画展では、23台のエプソン製UHDプロジェクターがダイナミックなスクリーンを鮮やかに描き出し、映像や写真、音響が一体となって展示全体の臨場感を演出しています。来場者は3つのゾーンに分けられた空間を巡りながら作品を楽しむことができますが、なかでも全長22mの「ペインターズ・パレット」と名づけられた床面プロジェクションや、5.1×4.2mの大型プロジェクション・スケッチブックが、展示のハイライトとして来場者を迎えます。この複雑なシステムのAV設計と設置を担当したのは、ドイツのAVインテグレーターSIGMA System Audio-Visualです。
没入感あふれる体験を実現するためには、来場者の「間近に迫る」ようなリアルなサウンドが不可欠です
展示に使用されているシステムについて、SIGMAのAVインテグレーション統括責任者クリスチャン・バックス氏は次のように述べています。「私たちは、ドイツ・フットボール・ミュージアムと10年以上にわたり協力関係を築いてきました。元々インストールされているAV/メディア・システムも、私たちが手掛けたものです。このシステムの大きな特徴は、展示のテーマを刷新する際に、コアとなるシステムをそのまま活用できる点です。今回のような長期にわたる展示の場合でも、コンテンツだけを入れ替えれば済むように設計されています」
広い展示空間と多数のディスプレイで没入感のある体験を実現するには、マルチレイヤーの音響システムが不可欠となります。サウンド・デザインとオーディオ・コンテンツ制作を担当したのは、ベルリンを拠点とするLEM StudiosとPBX Studiosです。
LEM StudiosのMarkus ‘Hossi’ Hossack氏は、チーフ・サウンド・デザイナーとして、スタジオと現場の両方でミキシングを担当しました。ホサック氏はまずステレオ仕様のサウンドトラックを制作し、それをベースにリッチでイマーシブなサウンドスケープへと再構築しました。「空間全体が震えるような力強いサウンドが求められていました」とホサック氏は振り返ります。
会場にはもともと天井埋め込み型のフルレンジ・スピーカー・システムが設置されていましたが、リアルなイマーシブ体験を実現するため、来場者により近い位置から音を鳴らす必要がありました。「来場者のすぐそばで音を響かせることで、没入感を高めることができます」とホサック氏は説明します。この効果を実現するため、左右両側に設置された幅17.5 m、高さ26.5 mの大型プロジェクター・ウォール下部に、25台のGenelec 4430A Smart IPスピーカーが目立たないように設置されました。各スピーカーが個別のコンテンツを再生することで、来場者の位置に応じて異なるサウンドが聴こえる空間音響を生み出しています。
サウンドは驚くほど正確で、スタジオで鳴っていた音が現場でも完璧に再現されていました
作中のある場面では、天井スピーカーからクラシックのワルツが会場全体に響く一方、Genelecスピーカーからは個別の楽器パートが再生され、サウンドに奥行きと立体感を与えています。さらに、足音や鉛筆で描く音、雨音などの繊細な効果音も映像と連動して配置され、オーディオとビジュアルが一体となったイマーシブ体験を創出しています。「私たちが目指していたのは、“歩きながら体験する映画館”でした」とホサック氏は語ります。「音を複数のゾーンに分けることで、来場者一人ひとりに異なるリスニング体験を提供したかったのです」
「スタジオではDolby Atmosでミックスを行い、すべてを7.1.4ch構成で設計しました。ただし会場には50台のスピーカーがあるため、システム全体を現場の環境に合わせてスケールアップする必要がありました。タイミングやルーティング、同期の管理は本当に大きなチャレンジだったことに加え、すべてを仕上げるまでに与えられた準備期間はわずか4日間だったんです」とホサック氏は振り返ります。「本当にタイトなスケジュールでしたね」
Genelec Smart IP Managerソフトウェアがシステム構築に果たした役割について、ホサック氏は次のように述べています。「準備期間が非常に短かったため迅速な作業が求められていましたが、Smart IP Managerでフィルタリングや各スピーカーへのレイテンシー設定を柔軟に行うことができたため、とても助かりました。展示の中心エリアを基準にレイテンシーなどを微調整しながら全体を調整して、没入感を最大限に保つよう努めています」
今回のプロジェクトでは、オーディオ信号、電源、管理のすべてが1本のCATケーブルに統合できるSmart IPシステムのネットワーク機能が、極めて重要な役割を果たしています。ホサック氏とLEM Studiosは以前、70台のGenelec Smart IPスピーカーを使用したマーベル展での音響設計も手がけています。当時を振り返り、ホサック氏は「マーベルのプロジェクトでは音響にかなりのコストがかかりましたが、Smart IPの優れた拡張性、音質、迅速な設置性は、費用をかける価値が十分にありました」と語ります。
「私たちは自社のスタジオでもGenelecシステムを使用しており、品質に非常に満足しています」とホサック氏は続けます。「極めて正確なサウンドで、スタジオでの作業を現場で再生した際の再現性も完璧です。スタジオではSmart IPセットアップとGenelecスタジオ・モニターを導入していますが、現場に持ち込んでも再調整は一切不要です。スタジオとまったく同じ音が鳴るんです」
精密な定位を完璧に再現できたわけではないものの、ホサック氏はむしろその方が効果的だったと振り返ります。「来場者は展示を見ながら自由に歩き回るため、すべての音をスイートスポットで聴くことはできません。そのため、定位をやや緩めることで、臨場感を保ちながら、より多くの人が豊かなイマーシブ体験を楽しめるように調整しました。わずか4日間の準備期間で、これだけの成果が出せたことには、とても満足しています」
SIGMAのクリスチャン・バックス氏も、プロジェクトの仕上がりについて次のように述べています。「私たちの専門知識とメディア技術を駆使して、世界的の人々をつなぐ展示づくりに貢献でき、大変光栄です」
タイトなスケジュールと複雑な技術的課題を乗り越え、Genelec Smart IPスピーカーは、アートとサッカーを通じた記憶に残るイマーシブな音響体験の中核として、重要な役割を果たしています。この展示は今後、世界中を巡回させる計画も進行中で、Smart IPシステムはその実現に不可欠な存在です。Genelec Smart IPシステムの特徴である設置の容易性について、ホサック氏は次の様に述べています。「このシステムは、従来の方式に比べて設置や撤去にかかる時間を大幅に短縮できます。私が知るかぎり、市場で最も柔軟性の高いスピーカーです」
明瞭な音質、優れた拡張性、そして導入の容易さを誇るGenelec Smart IPシリーズが実現した「In Motion – Art & Football」。そのストーリーは、いままさに世界へと広がろうとしています。
German Football Museum
ドイツ・フットボールミュージアムは、ドルトムントに位置する2015年開館の国立サッカー博物館です。ドイツサッカーの歴史、ファン文化、社会的側面などを多様な展示と最新技術で伝える施設です。
Smart IP設備/店舗向けスピーカー
卓越したオーディオ信号、電源、使用環境に合わせたスピーカーの構成/監視/音響調整機能を、1本のLANケーブルで実現するネットワーク・アクティブ・スピーカー・システムです。
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