世界的自動車メーカー「ステランティス」、Genelecと提携したイマーシブ・リファレンス・ラボを開設

Stellantisのチーフ・ソフトウェア・オフィサーであるイヴ・ボンフォン氏は、このラボの意義について次のように述べています。「オーディオは、お客様の満足度やクルマとの心地よい時間を高めるうえで非常に重要な役割を果たすだけでなく、重要な機能や運転状況を知らせる手段としても不可欠な役割を果たします。この新しいラボは、Stellantisのグローバル戦略においてインドが果たす重要な役割を示しているのですが、なにより、世界最高水準の車内音響を目指す当社の取り組みの強い表れでもあります」
アコースティック・エンジニアリング部門のディレクターであり、音響分野の責任者であるアクシャイ・カンナ氏が主導するこのラボは、 Stellantis社の車載オーディオ・システムのさらなる品質向上を目指して設立されました。「このラボは、当社独自の車載オーディオ・シグネチャーを開発する目的で設立されたものですが、最終的に、開発体制の強化、OTA機能(車両の機能をインターネット経由で更新できる技術)の提供、そして市場投入までの期間短縮に寄与しています」とカンナ氏は説明します。
Genelecは業界のベンチマーク。
音質、包まれ感、音色、音圧レベル、すべてにおいて我々の基準を満たしています
このラボには多くの優れた特徴がありますが、特に注目すべきは、残響時間のコントロール性能です。低音域では、わずか0.5秒という優れた数値を実現し、中音から高音にかけては、全体を通して安定して0.2秒を維持しています。これは、音の反射が均一で、どの周波数帯でもバランスが取れていることを意味します。また、IEC(国際電気標準会議)やDolbyが定める厳しい音響基準にも完全に準拠しており、多くの項目で100%の評価を獲得。さらに、室内の静けさを示すノイズ基準(NC値)でも「20以下」という非常に優れた数値を記録しており、理想的な音響環境が整っています。
このラボの音響設計には、有限要素法(FEA)、境界要素法(BEM)、レイ・トレーシングといった高度なコンピューター・シミュレーション手法が用いられており、時間領域で理想的な音響応答を実現することで、イマーシブ・オーディオが持つ感動的で没入感のある体験を最大限に引き出す空間が完成しました。また、空気伝搬音と固体伝搬音の遮音性能でも業界の新たな基準を築き、音響透過クラス(STC)は優れた数値である68を記録しています。これらのアプローチにより、ラボの立ち上げプロジェクトは、わずか53日というスピードで完成。クルマとモビリティ技術の進化を象徴する施設となりました。
このように精密に設計されたプロジェクトにおいては、最適なオーディオ技術の選定が非常に重要な鍵となります。その中で、Genelecはまさに “選ばれるべくして選ばれた” モニター・ブランドでした。インド国内におけるGenelecのパートナー企業であるSound Teamが、システムの導入を担当。導入前後にわたって包括的なサポートを提供することで、プロジェクトは非常にスムーズに進行し、成功裏に完了することができました。
スピーカー・システムはすべて、GenelecのSAM™スタジオ・モニターとサブウーファーで構成されています。フロントのL-C-Rには8361、サラウンドとハイト・チャンネルには8351、そして低域には大出力のサブウーファー7382が採用されています。さらに9301 AES/EBUインターフェースにより、マルチチャンネルのデジタルオーディオ接続が可能になり、モニター・システム全体のシームレスな統合が実現。GLMソフトウェアによって周波数特性、音量、距離遅延などが精密にキャリブレーションされ、Stellantisの技術的・美的な要求にもしっかりと応えています。カンナ氏は「Genelecは業界のベンチマーク。音質、包まれ感、音色、音圧レベル、すべてにおいて我々の基準を満たしています」と明言します。
Genelecのテクノロジーは、私たちの要件を満たすうえで非常に重要な役割を担っています
Dolbyの厳格な基準を満たすためには、残響時間、遮音性能、吸音性能のすべてにおいて高いハードルが課されましたが、チームは綿密な評価と計画、そして高度なシミュレーションを組み合わせることで、これらの基準を達成することができました。
「非常に厳しいプロセスではありましたが、チームの高い専門性とコミットメントが成功の鍵となりました」
「Genelecのテクノロジーは、私たちの要件を満たすうえで非常に重要な役割を担っています。コンパクトなサイズでありながら、帯域幅、音色、音圧レベルといった音のクオリティを一切損なわない点が大きな魅力です。また、AESデジタル入力に対応した数少ないモニターのひとつでもあり、ケーブル配線の簡素化にもつながっています。こうした点は、今回のプロジェクトでは非常に重要でした」とカンナ氏は語ります。
すべてのDolby Atmos 9.1.6要件を満たすこのラボが完成したことを受けて、カンナ氏は「この素晴らしい成果をともに築いてくれたパートナー、Genelecと喜びを分かち合いたい」と満足げな表情を見せました。
今後Stellantisは、このオーディオ・リファレンス・ラボを拠点とし、「音質のさらなる向上」「持続可能性の向上」「より豊かなドライビング体験の提供」というビジョンの実現に向けて、音響イノベーション戦略を一層推進していく予定です。
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