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このレコーディングでは、全面的にGenelecのスタジオ・モニターが採用され、重要な役割を担いました。昨年のInterBEE 2019にて提案したGenelecによる高精度なリスニング・セッションが、今後、世界中の展示会やイベント会場へと広まるための大きなカギとなります。

フィンランドのラハティに位置するシベリウス・ホール


Mick沢口氏は、2018年に東京で開催された「AES2018 インターナショナル・カンファレンス - Spatial Reproduction -」での会話から、このプロジェクトがスタートしたと振り返ります。

Mick沢口「会期中はGenelecのセミナールームで、UNAMASレーベル(注:Mick沢口氏が主宰する高音質レーベル)の作品を用いながら、イマーシブ音源のデモを行っていました。その会場でGenelecのManaging Directorのシアマック・ナギアンさんとお会いする機会があり、“Genelecでイマーシブ普及のためのリファレンス音源制作企画があるのですが、その時にはUNAMASレーベルからも音源協力をいただけませんか?”と打診がありました」

そして1年後。コントラバス奏者であり、Genelecのブランド・アーティストでもあるユーホ・マルティカイネンが関わる形でプロジェクトが展開。以降、Mick沢口氏と共通のコンセプトのもとでプロジェクトは動きだし、二人はレコーディングに向け、クラシックの楽曲と演奏家の選定を開始しました。

マルティカイネン「どんな演奏家と組み、どのレパートリーをレコーディングするか。非常に自然な流れで、そしてまた自由な雰囲気の中で決断することができました」

Mick沢口氏はコントラバスの音色をこよなく愛していることもあり、演奏はクラシカルにこだわりました。それはこの種の音楽が、イマーシブ・オーディオ・フォーマットに適していると考えているからです。

マルティカイネン「作品を選ぶ際には多くの選択肢が存在しますが、定番であること、そして私のフェイバリットであるということから、まずフランツ・シューベルトのピアノ五重奏曲『鱒』を最初の作品として選びました。それと、次に選んだのはジャン=バティスト・バリエールのソナタ第10番です。これはバロック作品で、もともと2本のチェロで演奏することを想定して作曲された作品ですが、今回のレコーディングにあたってコントラバスとチェロで演奏する形式にアレンジを組み直しました。さらにもうひとつ、真の超絶技巧として私が崇めている、ジョヴァンニ・ボッテジーニの作品も演奏せずにはいられませんでした。そこで彼の作品の中でも最も人気の高い作品のひとつであるエレジーを選んでいます」

左からMick沢口氏とユーホ・マルティカイネン


Mick沢口「機材には最新のものを使いつつ、マイキングは最小限に保つことを心がけました。『スパイダー・ツリー・セットアップ』をメインマイクとし加えて、LFEとSL-SR用の複数のマイクをセッティングし、ホールの豊かな響きを捉えるハイトチャンネルマイキングを採用しました。これは、アートを捉えるツールとしてマイクロフォンを活用する『主観的イマーシブ』と私たちが呼んでいるものです」

シベリウス・ホールでの機材セッティング図


モニタリングのソリューションには、同軸ポイントソース・モニターとなる8341を使用。Mick沢口氏が日本で行う最終ミックスの前段階として、ラハティにあるシベリウス・ホールのロビーにモニタールームが設置されました。このような暫定的なモニタリング環境は、Genelecのキャリブレーション・ソフトウェアであるGLM(Genelec Loudspeaker Manager)が最も効果を発揮するシチュエーションです。ロビーに置かれた8341がその場に合わせて最適化され、不要な音響の影響が最小限に留められました。

『シューベルト:ます』収録時のマイキングおよび機材接続図。Mick沢口氏は「ステージの配置そのものがミックスになります。それが主観的イマーシブの目的です」と話す


マルティカイネン「こうしたホールなどで行うレコーディングにおいては、音響設備が整った専用のモニタールームが確保できることはほとんどなく、厳しいモニタリング環境での作業を強いられることが多々あります。しかし、そんな環境であっても8341は完璧なソリューションでした。私達全員が演奏する音、そしてそれがどのように響くのか。この両方のサウンドを聴くことができたからです。これは、ミュージシャンにとって理想的なことです。最近の一般的なレコーディングは洗練されすぎているきらいがあって、実際の空気感や雰囲気が失われているのではないかと感じています。Genelecはあくまで音楽ありきで、これが制作者にとっての起点となるわけです。レコーディングとは創造性を最重要として捉え、考えうる最高のレベルで音楽の可能性を引き出すものでなければなりません。この曲を聴いた時に、このシステムが演奏の空気感をしっかりと捉えていたことにとても満足しています!」

InterBEEでの講演も大成功に終わり、これを皮切りとして今回のレコーディング音源は、Genelecのイマーシブ・システムを紹介するイベント会場にて世界的に活用されることになります。Genelecはまた、イマーシブの素材を他のプラットホームにも転用できるかのリサーチを進めています。

マルティカイネン「イマーシブ・ミュージックの需要は劇的に伸びていくと予想しており、新たなフォーマットとして、これからより多くの皆様が楽しむことになると確信しています」

左からユーホ・マルティカイネンとMick沢口氏。InterBEE会場にて


このプロジェクトを振り返り、マルティカイネンは次のように締めくくります。

マルティカイネン「このプロジェクトを通してMick沢口さんたちチームと仕事できたことは、人生でまたとない素晴らしい機会でした。優れた演奏家達と素晴らしいホールで、素晴らしい機材に囲まれながら、ミュージシャンとして参加できたことも本当に光栄でした。これ以上何も望みません!」

【作品詳細】

『Franz Schubert Piano Quintet in Amajor D.667 Trout』

<配信サイト>
e-onkyo musicmora(192kHz/24bit FLAC版DSD版にて配信
<配信フォーマット>
192kHz/24bit FLAC/WAV192kHz/24bit 5.1ch FLAC/WAV/Dolby HD、DSD、MQA
※配信サイトにより取り扱いフォーマットが異なります。