: Genelec

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一番最初のきっかけは小学校の頃、CHAGE and ASKAのASKAさんの音楽に影響を受けたことです。小学校4年生くらいからポップスを聴き始めたんですが、“この人の音楽はなんだろう”と衝撃を受け、音楽について考えるきっかけになったのはASKAさんからですね。彼の音楽に自分自身が勇気づけられたり、楽曲自体そのものに魅了されたので、そこから自分も音楽に携われる仕事がしたいと漠然と夢を描いていたんです。

中学生になってからは、すでに解散していましたがTM NETWORK、その中でも小室哲哉さんの音楽が好きになって。小学校6年からピアノを習い始めていたのですが、中学生になってバンドを組むようになるとキーボードを担当するようになりました。一方で小室さんは映画のサウンドトラックの曲も作られていて、そうしたマルチに作曲されている方に憧れを持つようになったんです。それで、自分自身もだんだん作曲に力を入れるようになっていきました。それこそ小室さんが広告に出ていたYAMAHAのキーボードEOSを使ったり(笑)。これがスタートです。

高校1年生の終わりくらいに、親に音楽をやりたいと伝えたら、父親の知人で作曲をしている先生のもとでレッスンを受けさせていただけることになったんです。恐らく、そうすれば現実の厳しさを知って、気持ちを打ち砕かれて辞めるだろうと考えたのかもしれません(笑)。その先生は現代音楽を手掛ける方で、発想や話が面白かったので、逆により作曲の世界にのめり込んでしまいました。

また、ちょうどその頃、スタジオ・ジブリ映画の『耳をすませば』のサウンドトラックを知人の家で聴くことがあったんですけど、その時インストの音楽がすごく新鮮に感じたんです。妹も『魔女の宅急便』のサウンドトラックを持っていたのでそれを聴いてみたりしたことで、それまで意識をしていなかったインストに面白さを感じたんですね。それでレッスンの時に劇伴に興味があることを先生へ伝えて、オーケストラの勉強もするようになりました。

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高校2、3年の時には、映像音楽の世界に行きたいという気持ちが強かったですね。ただ小室さんやASKAさんの影響もあったので、歌の楽曲をやりたいという想いもどこかにあって。それが両立できたらいいなという気持ちもあり、作曲の専門学校へ進学しました。

それから年を重ねるにつれ、より映像音楽の作曲家になりたいという気持ちが強くなって、自分からデモテープを送ったり、プレゼンをするようになりました。その時々で興味を持った音楽ジャンルが変わっていくので、ある時はオーケストラの曲をシミュレーションしてDTMで打ち込んだり、ある時はテクノっぽい曲にもトライしましたね。

Hiroyuki Sawano

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まず最初に興味を持ったのは、坂本龍一さんと久石譲さんですね。20代前半くらいには菅野よう子さんの影響を受けたのですが、ひとりの作曲家でも作品によって常に違うアプローチができるということを知って衝撃を受けました。そうしたスタンスに憧れて、自分もいろんな要素を吸収した上で、それを形にしていこうとしていましたね。

海外の劇伴の影響も受けているのですが、その中でもハンス・ジマーやダニー・エルフマンからの影響は大きいです。もちろん、それ以外にもその時々、部分ごとに影響を受けている作品はあります。エンニオ・モリコーネの作品も素晴らしいですよね。

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PCゲーム原作のアニメ作品の劇伴を担当したのが、一番最初だったと思います。急激に増えだしたのは『ガンダムUC』を担当させていただいてからで、それ以降は色々なものに繋がっていった印象があります。僕自身も『ガンダムUC』に携わる時、この作品がきっかけでアニメ作品のオファーがくるようになって欲しい、という気持ちで取り組んでいたところがありました。

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『進撃の巨人』では打ち合わせの時、荒木哲郎監督から「巨人のテーマとしてクワイヤを使って欲しい」とオーダーがあったんです。クワイヤにも色々な使い方があると思いますが、僕はハリウッドのサウンドに影響を受けていたので、クワイヤにロックの要素やパーカッション、さらにはオーケストラと融合させて、ハリウッド的なアプローチで攻めた方が面白いんじゃないかと考えました。『進撃の巨人』の作品が持つ“暗さ”を表現するには、ホラー感出すとか、もっとダークな曲調で合わせることもできるでしょうけど……。

荒木監督とは『ギルティクラウン』を経て2作目の担当となります。『ギルティクラウン』も『進撃の巨人』と同じく、作品のエンターテイメント性を大事にして、単純に見ていて高揚してもらえたりだとか、暗いシーンだけど暗いだけで終わらせないアプローチができたらいいな、と思って作っていました。そうしたスタンスを監督に面白がっていただけて『進撃の巨人』のオファーに繋がったのかな、と。

そんなこともあって『進撃の巨人』でも、映像に対して抑揚をつけていくようなイメージでエンターテインメントと関わるような音をつけようと作っていきました。

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作り方としては、基本的に打ち合わせで音楽メニューを作ってもらって、それに沿って監督となんとなく方向性を確認しておきます。毎回そのメニューに対してDTMを立ち上げて作曲をしていきますが、まずサントラ全体の肝になる曲を作ってから、他の部分を構築していくという感じでしょうか。ケース・バイ・ケースで、リズム隊から先に作ってみたり、メロディから作る場合もあります。あとはメインテーマとかキャラクターのテーマが重要になってくるので、先にそこを固めておいてからスタートする感じですね。

Hiroyuki Sawano

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ずっと「歌モノを集中してやってみたい」という思いを持ちながら音楽制作を続けていて、多くはないものの劇伴の中にも歌モノの楽曲を作ったりしていました。[nZk]はこの思いを受けて、歌モノに特化した曲を中心にライブをやろうと動き出したことがきっかけでスタートしています。

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[nZk]が始まった時、すでに作品の主題歌となることが決定していた楽曲もあったので、自分なりにポップさは意識していました。ただ、ここで言うところのポップさの定義は、日本のJ-POPというよりは普段から好きで聴いている海外の音楽だったりするので、独特な世界観に繋がっているのかもしれませんね。バンドものだったり、テイラー・スイフトとかアヴリル・ラヴィーンのような向こうのヒットチャートでポップだなと感じたものを取り入れて、自分なりのサウンドで出せていけたら、と思っています。

これは結果として、自分がこうだと思うサウンドを突き詰めていかないといけないな、という感覚に繋がっています。シングルチャート成績が悪かったりすると、「どうしようかな、次はJ-POPを意識した曲を書かないといけないかな」とか悩みそうな瞬間もありました。でも、結局そんな簡単には売れないですし、そもそも売れることにどういう意味があるのかとも考えたんです。やっぱり「この音楽が好きだ」という本質的なところで興味を持ってもらわないといけないと、改めて気づいたのが[nZk]の2ndアルバム『2V-ALK』を作っているときでした。

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「WALK」は僕自身もCHAGE and ASKAの楽曲の中で一番好きな曲なんです。ASKAさんは「WALK」を作った頃に、それまではヒットチャートを気にしてそこに寄せた音楽を作ろうとしていたけれども、一旦その流れを断ち切って「自分たちのやりたいことをやるんだ」と思いを新たにしたそうなんです。この信念を通したことで、後の「SAY YES」に繋がって大ヒットして、自分たちが信じたものが色々な人に聴かれるようになっていった。そういう精神的な部分にインスパイアされて、『2V-ALK』というアルバムタイトルを付けたんです。

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アマチュアの頃は、スピーカーもM-AUDIOなど手頃な価格帯のものからスタートしました。プロになった頃にYAMAHAのMSPシリーズを使い始めたんですが、2010年にいまのスタジオを作ったタイミングで、自分にとって最初のGenelecとなる8040を選びました。Genelecは他の仕事場でもよく見かけていましたし、信頼できるものを感じていました。

エンジニアの方がスピーカーを選ぶ時とは少し基準が違うかもしれませんが、僕自身は曲を作る時にテンションを上げてくれるサウンドを持つスピーカーが理想です。当時相談した方からも「それならGenelecがいいかもしれない」とアドバイスを頂いて導入を決めて、それ以来ずっと8040を愛用していました。ただ、昨年末に修理が必要な状況になり、それをきっかけによりニュートラル感があるというThe Onesシリーズの8341に切り替えたんです。

実は、よりフラットに聴こえるということで、それまでの輝き感、一種の派手さが落ち着いて聴こえてしまうのかな、と心配していたんですよ。でも8341は、低域の出方も含めてバランスが良いことに加えて、曲を作っている時の“テンションを上げてくれるサウンド”もしっかりと出てくる。もちろん、8040も気に入っていましたけど、The Onesシリーズの8341になって中域の見え方もはっきりしていますし、高音の伸び感もさらに良くなって満足しています。

ちなみに、GLMは入れっぱなしの状態で使っています。このプライベート・スタジオはエンジニアがミックスに使うこともあるのですが、8341になってからは音のバランスが取りやすくなったそうで、さらにGLMでキャリブレーションしたことで「エンジニアとしても作業しやすい音になった」と話しています。

Hiroyuki Sawano

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いいえ、今はGenelecのみですね。違う環境でのサウンド・チェックでもっと小さなスピーカーで聴く時以外は、8341のままです。サウンド・トラックの場合は、30~40曲を一気にこのスタジオでミックスすることもあります。

曲作りはこのスタジオで行いますが、録音から先は外部のスタジオです。ただ外部のスタジオで収録した音源も仕上がりのチェックをする時は、一回持ち帰ってこの8341でファイナル・ミックスを確認しますね。その結果を踏まえて改めてスタジオで直してもらいます。つまり、最終的な音の判断は、この8341でしています。

Hiroyuki Sawano

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先ほどもお話ししたように、曲を作る人間としては音のバランスも大事ですが、それ以上に鳴っている音がかっこいいかどうか。サウンドの響きだったり、広がりだったりということに加えて、自分のテンションが上がるサウンドかという部分が最も大事だと思っています。曲作りでアガれる音、デザイン性、音像、音のバランス。Genelecはそのすべてが自分に適していると思いますし、魅力ですね。

あと、とても見た目がかっこいいなと。オブジェのようです。8040のときも今回の8341も、カラーリングはホワイトにしました。見た目がスタジオとマッチしていたことが理由のひとつですが、今回は特に未来感を感じますね。8341のデザインを見た時は、「攻めているなぁ」と。スターウォーズの世界みたいで他にない個性ですし、本当にかっこいいなと思います。

インタビュアー | 岩井 喬
フォトグラファー | 小野広幸


プロフィール

1980年生まれ/東京都出身。ドラマ、アニメ、映画など映像の音楽活動を中心とし、その他にもアーティストへの楽曲提供・編曲など精力的に活動している。 2014年春、ボーカル楽曲に重点を置いたプロジェクト、SawanoHiroyuki[nZk](サワノヒロユキヌジーク)が始動。プロジェクト第一弾として『機動戦士ガンダムUC』にて楽曲提供及びプロデュースをしたシンガーAimerと共に、機動戦士ガンダムUC episode 7公開記念スペシャルライブ“UnChild”を東京・大阪で実施。SawanoHiroyuki[nZk]:Aimer名義でアルバム『UnChild』をリリースし、オリコンCDアルバム週間ランキングにてTOP10入りを果たす。

続いて自身が劇伴を担当するTVアニメ『アルドノア・ゼロ』にて、SawanoHiroyuki[nZk]として1stシーズン・エンディング・テーマと2ndシーズン・オープニング・テーマを担当。2015年9月9日には1stアルバム『o1』をリリース。オリコン週間TOP10入りおよびiTunesアルバムチャート2位を記録。

2016年、TVアニメ『機動戦士ガンダムユニコーン RE:0096』のオープニング・テーマとエンディング・テーマを担当。『Into the Sky EP』はオリコン週間6位を記録し、iTunesではシングル/アルバム共に1位を記録。2017年6月28日には、自身が劇伴音楽を手掛けるTVアニメ『Re:CREATORS』のオープニング・テーマ「gravityWall」を収録した通算5枚目となる両A面シングル『gravityWall / sh0ut』をリリース。9月20日には2ndアルバム『2V-ALK』をリリースし、自身最高となるオリコン週間3位を記録。2018年11月『機動戦士ガンダムNT』主題歌を収録したシングル「narrative / NOISEofRAIN」がオリコン週間ランキングでTOP10入りを果たす。2019年3月6日には豪華ゲストが参加した3rd アルバム『R∃/MEMBER』をリリースし、オリコン週間6位を記録。

2020年7月29日、TVアニメ『ノー・ガンズ・ライフ』オープニング・テーマ「Chaos Drifters」と『銀河英雄伝説 Die Neue Thes』のオープニング・テーマを収録した9thシングル「Chaos Drifters / Cry」を発売。8月には無観客ライブ配信「澤野弘之 LIVE “BEST OF VOCAL WORKS [nZk]”」を実施し、大成功を収めた。

澤野弘之WORKS

- アニメ
『機動戦士ガンダムUC』『機動戦士ガンダムユニコーン RE:0096』『機動戦士ガンダムNT』『進撃の巨人』『甲鉄城のカバネリ』『キルラキル』『青の祓魔師』『戦国BASARA』『ギルティクラウン』『アルドノア・ゼロ』『終わりのセラフ』『Re:CREATORS』『プロメア』『七つの大罪』他

-ドラマ
『医龍 Team Medical Dragon』『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』『トライアングル』『魔王』『タイヨウのうた』『NHK連続テレビ小説「まれ」』『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』『マークスの山』『プリズナー』他

- 映画
『プラチナデータ』『自虐の詩』『陰日向に咲く』他

澤野弘之 オフィシャル・ウェブサイト
www.sawanohiroyuki.com
SawanoHiroyuki[nZk] オフィシャル・ウェブサイト
www.sh-nzk.net


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