IMAGICA SDI Studio : ワールドクラスのダビング・スタジオに導入された「ソニック・レファレンス」

20202IMAGICA SDI StudioGenelec4The Ones835173705.1chDolby Atmos Home MasteringS36073807.1.4chIMAGICA SDI StudioGenelecIMAGICA SDI StudioSDI Media GroupDubbing Studio Technology DirectorDaniele Turchetta

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野津 弊社は、国内最大規模のポストプロダクションであるIMAGICA Lab.と、グローバルに様々な映像コンテンツのローカライズ事業を行なっているアメリカのSDI Media Groupの共同出資によって設立されたダビング・スタジオになります。事業を開始したのは今年(2020年)の2月17日のことで、外国語映像コンテンツの日本語吹替版制作や日本語アニメーション作品のアフレコ業務を中心に、声優さんのキャスティングや翻訳家の手配、ディレクターのご提案など、吹替や音響制作に関することであればワン・ストップで対応できる体制を整えています。

会社設立の経緯としては、2015年4月にSDI Media GroupがIMAGICA GROUPのグループ会社になったのを機に、IMAGICA Lab.とSDI Media Groupのコラボレーションが始まりました。具体的には、IMAGICA Lab.が国内のお客様からローカライズを受注し、SDI Media Groupが多言語版を制作するというコラボレーションですね。一方で、IMAGICA Lab.とSDI Media Groupそれぞれが国内外のお客様から日本語吹替版制作を期待されていたこともあり、日本国内での共同事業の検討を続けていました。そして2017年初頭、五反田にあるIMAGICA Lab.のMA室を改装してテスト的に業務をスタートしたのですが、順調に仕事が増えていったこともあり、次のステップとして吹き替えやアフレコに特化したダビング・スタジオを開設することになりました。

株式会社IMAGICA SDI Studio 代表取締役社長 野津 仁氏

株式会社IMAGICA SDI Studio 代表取締役社長 野津 仁氏

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野津 約235坪のワン・フロアに『101』から『105』まで5部屋あり、『102』から『105』までの4部屋はブースを備えたダビング・スタジオ、『101』はDolby Atmos Home Masteringに対応したミックス・スタジオという構成になっています。『102』のブースは25人くらい入る広さがあり、コントロール・ルームも10人以上入るスペースを確保してあります。

丸橋 海外の人たちは、"ブースの響きは要らない、残響は後から加える"というのが基本的な考え方で、ブースの広さ、特に天井高は物件選びの重要なポイントでした。また、天井が低いブースですと、役者さんは窮屈でやりにくいですし、長尺の映画の集合録りでは、ほぼ1日ブースに入らなければならないわけですからね。できれば3m以上確保できれば嬉しいなと考えていたんです。

株式会社IMAGICA SDI Studio ミキシング・エンジニア 丸橋亮介氏

株式会社IMAGICA SDI Studio ミキシング・エンジニア 丸橋亮介氏

野津 ブースの響きは、今回、スタジオをつくるにあたって最も気にかけていました。ブース内のモニター(ディスプレイ)はヨーロッパではスクリーンが好まれ、反射のある液晶ディスプレイは可能な限り避けて欲しいという話だったのですが、日本でのやり方を考えるとそれは難しい。スクリーンにすると部屋を暗くしなければなりませんし、日本では台本を手持ちで演技するのが普通で、明るさが必要になりますからね。そのあたりは日本特有の事情を説明し、何を優先するかというディスカッションをSDI Media Groupサイドと何度も行いました。

Turchetta 吹き替えを行うための設備や関連のアクティビティは、日本と他の国ではかなり異なります。間取りや部屋のサイズ、セッションに参加する人数、ポストプロダクションのワークフロー、機器の設定は、その地域によって固有のものです。今回の主な課題は、SDI Media GroupとIMAGILA Lab.双方が必要とする要素を組み合わせて、フラッグシップとなる設備を作り上げることでした。それは見事に達成することができ、IMAGICA SDI Studioは融合と共有における良い事例になったと思います。

SDI Media. Dubbing Studio Technical Director Daniele Turchetta氏

SDI Media. Dubbing Studio Technical Director Daniele Turchetta氏

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丸橋 吹き替えでは、台本やディスプレイを見ながら作業することが多いので、基本的には明るい雰囲気のスタジオにしたかったんです。ですので、『103』~『105』に関しては、白を基調として部屋ごとに赤や緑といったアクセントを持たせた明るい内装になっていますね。『102』に関しては、他の3部屋と広さが違うので、少しシックな雰囲気で高級感を出し、『101』はスクリーンの部屋なので黒を基調にしたデザインにしていただきました。

また、コントロール・ルームのクライアント席は、ソファではなく椅子を採用しています。最近はパソコンをお持ちになる方が多いので、机での作業がしやすいように椅子を置くことにしました。リラックス性よりも作業性を優先した感じです。椅子ですと、たくさんクライアントさんが来られた時も柔軟に対応できますし、とても良かったと思っています。各部屋のコントール・ルームは、『101』と『102』、『105』は約10人、『103』と『104』は約8人収容することができます。

ダビング・スタジオ『103』のコントロール・ルーム。8351と7370を用いて5.1chシステムを構築

ダビング・スタジオ『103』のコントロール・ルーム。8351と7370を用いて5.1chシステムを構築

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丸橋 弊社が手がけている吹き替え作業、特に配信系のコンテンツは5.1chが主流で、ステレオのみという作業は本当に少ないんです。ですので、全部屋5.1chに対応させるということは最初から決めていました。また『101』については、IMAGICA GROUPの国内のMAスタジオでDolby Atmos Home Masteringに対応した部屋はこれまでなかったのですが、今後吹き替えでもその需要が高まってくると思ったので、今回対応を決めました。幸い、ハイト・スピーカーを設置できるだけの天井高を確保することができましたので、スピーカーの構成は7.1.4chです。

Turchetta NetflixやApple、Amazonといった主要なOTT(Over-The-Top)プロバイダーでは、少しずつではありますがDolby Atmos対応のサウンド・トラックのタイトル数が増えています。また、一般家庭に設置できるイマーシブ・オーディオ・システムも手頃な価格になってきているため、Dolby Atmosフォーマットでのローカライゼーションのリクエストは今後増えていくと予想しています。

今後の吹き替え需要を見越してDolby Atmos Home Mastering対応とすることを決定。ハイト・スピーカーを設置した7.1.4chの構成とした

Dolby Atmos Home Mastering対応の『101』は、ハイト・スピーカーを設置した7.1.4chの構成とした

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丸橋 五反田のスタジオでは8350を使用していたこともあり、最初からGenelecが一番の候補でした。また、Danieleさん(Turchetta氏)からも「全部屋The Onesシリーズで統一したらどうか?」というアドバイスがあったんです。

Turchetta Genelecは日本での知名度も高く、とても評価されているブランドです。私たちの目標は、録音~編集~ミキシング~マスタリングといったオーディオ経路におけるすべての過程で、ニーズに合致した最適な選択を用意することでした。

The Onesシリーズについてはローンチ時から注目しており、私はそのパフォーマンスを非常に高く評価していました。2019年にフィンランドのイーサルミにあるGenelec本社で行われたトレーニング・コースに参加する機会があったのですが、そこでThe OnesシリーズのバックグラウンドにあるテクノロジーとGLMシステムの詳細について深く学ぶことができたんです。

今回のような複数のマルチ・チャンネル・ルームで構成される複雑かつ妥協のないプロジェクトにおいて、The Onesシリーズは私たちが求めていたすべての要件を備えていたと言っていいでしょう。3ウェイの同軸ソース、広いスウィート・スポット、高いSPL、ホリゾンタル・マウント、コンパクトなサイズ、GLMテクノロジーのメリットなどなど……。まさしくIMAGICA SDI Studioにとって、これ以上ない選択肢だったと言えます。

『102』〜『105』に導入された8351。「The Onesシリーズは私たちが求めていたすべての要件を備えていた」とTurchetta氏

『102』〜『105』に導入された8351。「The Onesシリーズは私たちが求めていたすべての要件を備えていた」とTurchetta氏

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丸橋 導入前に、様々なメーカーから出ている同価格帯のアクティブ・スピーカーをお借りして聴き比べを行ったのですが、その中でも特に印象に残ったのが、S360だったんです。一緒に試聴した他のスタッフと「どのポジションで聴いても音が素直に飛んでくる!」と、そのサウンドには本当に驚きました。試聴はステレオで行い、音楽や自分たちがミックスした吹き替えの音源をチェックしたのですが、他のスピーカーと比べても圧倒的に解像度が高く、低域~中域~高域のバランスがすごく良かったんです。The OnesシリーズだけでなくS360も導入したいというのは、試聴したスタッフ全員満場一致の意見でした。実は当初、全部屋にS360を導入するというプランもあったのですが、さすがに『101』以外の部屋では大きさ的にマッチしないだろうと。それで『101』だけS360を導入し、他の部屋には8351を導入したというわけです。

Turchetta The OnesシリーズとS360の導入によって、結果的にそれぞれの用途に最適なスタジオの構築ができました。『101』はS360によって、シアター・ルームさながらに85dB SPL(c)でコンテンツを再生できるようになっています。

S360はDolby Atmos Home Mastering対応の『101』で全面的に採用されている

S360はDolby Atmos Home Mastering対応の『101』で全面的に採用されている

同じく、Dolby Atmos Home Mastering対応の『101』に採用された、2台のサブウーファー7380

同じく、Dolby Atmos Home Mastering対応の『101』に採用された、2台のサブウーファー7380

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丸橋 やはりマルチ・チャンネルの音響には、位相特性においてThe Onesシリーズのような同軸のスピーカーが合っていると思います。音がまとまっているというか、Danieleさんが8351を薦めていた理由が分かります。劇場予告のような大音量のコンテンツでもほとんど音割れしませんし、低域が滲んでしまうような音質的なクセもない。こちらもS360同様、素晴らしいスピーカーですね。S360が入っている『101』と、8351を導入した他の部屋を行き来しても、ほとんど違和感がありません。

Turchetta Genelecのスタジオ・モニターは、堅牢で本質的にプロフェッショナルなところが気に入っています。The Onesシリーズのダイキャスト・アルミ・エンクロージャー、そしてMDFを採用したS360のデザインも私は好きですね。

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Turchetta GLMは、スピーカー・セッティングを自動で最適な状態にしてくれます。例えルーム・アコースティックに配慮した部屋であっても、さらに最適なパフォーマンスを簡単に得ることができる素晴らしい技術だと思います。

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Turchetta 設計の過程では、スピーカーを等距離にセットアップするという典型的なことと、複数の人に対応するということのバランスを取ることにフォーカスしました。等距離にセットアップするというのは、5.1chの場合はBS ITU R 775.3、Dolby Atmos HEの場合はDARDT/BS ITU R 2051に準拠するということです。今回の主なチャレンジは、オペレーターが最高のリスニング体験と快適さを保つために、スピーカー・マウントの高さの適切なポイントを、耳のレベルを基準として提案された偏差角の中で見つけることでした。

Dolby Atmos Home Mastering対応のミックス・スタジオ『101』

Dolby Atmos Home Mastering対応のミックス・スタジオ『101』

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丸橋 そうですね。工事期間中はいろいろと悩みましたが、実際にスタジオを使用したスタッフやお客様から「すごく使いやすい」と言っていただけることが多いです。ひとつひとつの音が本当に聴きやすく、収録ブースもS/Nが良く反響が少ないので、この点はクライアントさんからも評価いただいています。数年苦労してつくっただけのスタジオができたと大変満足しています。

Turchetta 素晴らしくハイ・クオリティな設備のスタジオに仕上がったと思います。設計過程ではグラフィックのレンダーを多用したのですが、それが最終的な仕上がりと非常に近かったことに感銘を受けました。

野津 すでに多くの方々に作業でのお立合いやスタジオ見学で見ていただきましたが、非常に良い評価をいただいています。国内には他にもダビング・スタジオはありますが、このスタジオは国内のお客様の要望と海外のお客様の要望の両方に応えられる設備になっており、これは大きな特色なのではないかと思っています。日本国内でこれだけの規模の音専門のスタジオをゼロからつくったのは、IMAGICA GROUPの長い歴史の中でも初めてのことになります。大変なスケジュールの中でご尽力いただいた関係会社の皆様には、大変感謝しております。


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