Daichi - Genelec

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Genelec

Daichi氏が最初にGenelecに触れたのは1990年代に製造されていた2ウェイ仕様の1031Aでした。当時の音楽制作モニターはまだパッシブのスピーカーが主流でしたが、エンジニアによってはスタジオにGenelecのニアフィールド・タイプを持ち込むこともありました。「当時、僕が通っていたレコーディング・スタジオでは1031Aがよく鳴っていて。だからこの音に慣れていたんです」と、Genelecを導入した理由を語ります。Daichi氏が最初に導入したのは1029Aでしたが、1030Aに買い換えたあとは、長く使用したとのこと。1030シリーズは1990年代のGenelecを代表するモデルですが、当時のサウンドについてDaichi氏が振り返ります。

「1030Aの音は今のGenelecよりも派手な印象でしたね。当時はパッシブのスピーカーと併用してて、その組み合わせも良かった。ローとハイは1030Aで確認して、歌の細かいところはパッシブのスピーカーで聴いていましたね。1030Aの繊細な感じはミックスもしやすかった。あと僕は曲を作るから、そういうときはテンションが上がる音のほうが気持ち良く作業ができる。だから、Genelecとの相性が良かったんだと思います」

Studio Cubicのミックス&マスタリング・ルーム

Studio Cubicのミックス&マスタリング・ルーム - よりフラットなモニターが可能になったと評価する8341Aと、ドラム録音のモニターにも愛用している1038CF

 

その後、Daichi氏は2006年頃に8050Aを導入します。スピーカーのエンクロージャもMDF(合板)からリサイクル・アルミニウムへと変わり、「方向性が大きく変わった」という印象を持ったそうです。その理由を振り返ると、当時の音楽のトレンドも含めて、機材の変遷にも関わりがあるとDaichi氏は言います。

「8000シリーズは素材の変化だけじゃなくて、見た目のインパクトもあって好みでした。音は1030シリーズのような派手さが少なくなってよりフラットになりましたね。8000シリーズが発売された2000年代半ばって、CDメディアにおけるラウドネス競争があったじゃないですか? リミッターをガンガンにかけて、音圧を稼ぐのがトレンドになって、録音環境もPro Toolsが主流になっていった。録り音はクリアになっていったけど、音質面はまだそこまで良くなくて、その分をアナログの機材で補完したりしていました。そういった環境の変化で、スピーカーに求められる音も変わっていったんだと思います。Genelecも8000シリーズのようなフラットかつレンジの広いスピーカーのほうが、音作りもミックスもしやすくなっていったんだと思う。その一方で、1990年代はSSLのコンソールでミックスをして、録音にもテープを回していた時代。あの頃は1030シリーズのように派手に聴こえる音のほうが、アナログで録った音の判断がしやすかったですね」

Genelec創業者イルポ・マルティカイネンからのDaichi氏へのビジネス・レター

Genelec創業者イルポ・マルティカイネンからのDaichi氏へのお礼のレター

これまで手掛けた作品や日本レコード大賞の受賞盾などが並ぶロビー・スペース

これまで手掛けた作品や日本レコード大賞の受賞盾などが並ぶロビー・スペース

GLM

1990~2000年代は音楽を録音するメディアがアナログ・テープからデジタル・データへと変化した転換期でした。最初に8050Aを導入したのち、Daichi氏は自身にとって最初となるGLM(Genelec Loudspeaker Manager)ソフトウェアに対応した8250Aを導入しStudio Cubicの音場もさらにフラット化が進みました。

「僕は新しい物が好きだし、DIYでスタジオを作っていくなかで”リファレンスの正しさ”に難しさを感じていたので、GLMのように機械で補正してもらったほうが納得できるなと。最初に使ったGLM(当時はver 1.5)はとにかく数値を打ち込んでいく業務用ソフトという感じで、扱いが難しかった(笑)。加えて当時のGLMはスピーカーの特性をフラットにしてくれる一方でローが少し削れる印象もあり、その辺りも意識をして調整をしていました。GLMはバージョンアップとともにソフトもグラフィカルになって誰でも使えるようになったし、補正の精度も格段によくなった。そのおかげで、スタジオのGenelecも以前よりもフラットに鳴らせるようになったし、お客さんが座る位置でも良い感じで鳴らせるようになりました。このあたりもGLMを導入して良かった点ですね」

鈴木Daichi秀行

現在のDaichi氏が使用しているのは同軸3ウェイの8341A。これまで使用していた2ウェイ・モデルから変わった点について説明します。

「The Onesシリーズはさらにフラットになった印象で、ボーカルが見えやすくなりました。同軸3ウェイ・モデルで指向性が広く、リスニング・ポジションによって印象があまり変わらないのが良くて、あと、長時間聴いても疲れません。先ほど話した録音機材の変遷に話をつなげていくと、Pro Toolsは2011年以降、HDXシステムが登場して内部処理のビット数も上がったことで音質が格段に良くなりました。それによってサミングの役割も変わり、以前は音質を補完するために使っていたものが、今度はクリアなものにトランスなどの"汚す"系の質感を加えるようになった。そういったプロセスにおいては、細かいニュアンスがよりリアルに見えるスピーカーのほうが相性も良いです」

Studio Cubicのレコーディング&プロダクション・ルーム

Studio Cubicのレコーディング&プロダクション・ルーム

Genelec

Daichi氏の言葉からも、レコーディング機材の進化によって、制作する音をモニターするスピーカーにも、正確でフラットなサウンドが求められるようになっていったことが分かります。

ここまでDaichi氏が愛用してきたGenelecスピーカーの変遷について触れてきました。パワード・タイプのモニター・スピーカーが珍しかった1990年代から現在まで、30年以上に渡りDaichi氏はGenelecを愛用しています。スタジオに膨大な機材コレクションがあり、そのつど機材を選定して使い分けているDaichi氏ですが、モニター・スピーカーというリファレンス部分に関してはこれまでGenelec一筋。その理由を最後に語ってくれました。

「スタジオも大規模な商用系がメインだった時代から、僕が作ってきたStudio Cubicのようにプライベート・スタジオが増えていきました。そういった録音環境の変化にも順応しながらGenelecも進化したように感じます。そうは言ってもGenelecのスピーカーが持っている、音がストレートに伝わってくる感じというのはずっと変わらない。Genelecの音は正確なんだけど聴いていて楽しいんですよ。そこが音楽を作る側としては大事な部分だったりもします。真面目過ぎる音だとテンションが素に戻っちゃうから、そうならずに“イエイ”って言いながら僕は音楽を作っていたい。そのバランスがすごく良くて、だから僕にはGenelecが合っているんだと思います」

鈴木Daichi秀行


Daichi

プロフィール  プロデューサー、コンポーザー、アレンジャー。絢香、モーニング娘、Superfly、YUI、miwa、家入レオ、LiSA、高橋優、いきものがかり、FTISLAND、平井堅、SUPER☆GiRLS、島爺、伊東歌詞太郎、相川七瀬、ももクロ、SMAP、SexyZone、NonStopRabbit、森翼など数々の作品を手がける

Cubic Records公式サイト
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